「美術モデル」のアルバイトについて

  • 2017/2/13

美術館に行くと、「裸婦」をモチーフにした作品がたくさんあります。なめらかな肌と、しなやかな肢体は、女性側の視点で見ても美しいものです。けれども、作者の説明は詳しくのっていても、「モデル」に関する情報は、ほとんどないのが現状。ところが、ちまたには「美術モデル」と呼ばれる女性たちが実際に活躍しています。過去に彼女達について取材する事があったのですが、その、その事についてサラッと述べたいと思います。

絵画教室や、芸術系の大学では、技術向上のために「人体モデル」を使ったデッサンを行います。モデルは台の上で、じっと動かずにポーズをとりつづけます。現場によってもいろいろですが、二十分間一ポーズとして、一日六ポーズから十二ポーズが一単位。日給は、一万五千円から二万円が相場だそうです。
「モデル」という名前につられて「優雅な仕事」なのかと勘違いされる方が多いのですが、実際は、かなりの過酷な肉体労働です。ずっと、片方の足にだけ体重をかけていたり、腰をひねった体勢で静止すると、体に相当な負担がかかるのは、仕方ないことなのですが。でもキツイ仕事です。

まれに、求人情報誌や、ハローワークで募集することもありますが、誤解されやすい職種なので、知人に紹介されてモデルになるケースが多いようです。
というのも、たまには「着衣あり」の仕事もないわけではありませんが、ほとんど「着衣なし」と呼ばれる全裸ばかり。洋服のモデルは、生徒さんが順番でしている教室が多いそう。
第三者に話すと驚かれますが、モデルは、男性をそういう気持ちにさせるために、服を脱いでいるのではありません。そして、意外と年齢も幅広く、五十代後半のモデルもいました。
彼女は、新劇の劇団に所属していた二十代から、ずっと続けていて、現在は主婦。ふたりの子供は、すでに自立しており、今は「おこずかい稼ぎ」のため、週に二度、作家さんのアトリエに通っています。

服を着たままなら、「銀ぶちめがねの地味な奥様」ですが、いったんポーズをとると、プロの貌に。
全身の手入れが行き届いていて、「世の中に、これだけきれいな人もいるものなのか」とため息をつきたくなります。つま先から、頭のてっぺんまで、くまなく視線にさらされているため、体型にも肌にも、ほどよい緊張感をたもつことができるのでしょう。

美術モデルの仕事場は、メインは、学校やカルチャースクールですが、講師や、主催者側からお呼びがかかれば、特定の作家のお抱えモデルになることも。すると、収入も日給や、一ポーズ何円だけではなく、みずからがモデルになった作品が売れるたびに、お祝儀をいただける場合もあり、あるベテランのモデルさんは、「とても励みになるし、やりがいがある」と語ってくれました。

一枚の「裸婦」の裏側には、真剣にモデルをつとめた女性のドラマがあるのですね。

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