熊だったり獅子だったり~国際映画祭のグランプリって?~
- 2015/8/26
毎年、初夏にはカンヌ、夏の終わりにはヴェネツィア、冬にはベルリン・・と国際映画祭での様子が中継されたり、映画館へ足を運べば、様々な映画祭の何かの賞を受賞したらしい記述があったりします。
わかるようなわからないような、区別がつくようなつかないような。金熊賞に金獅子賞、パルム・ドール・・・どれがどれ?どうすごい?
~三大映画祭~
数多ある国際映画祭の中から今回は、三大映画祭と呼ばれる
■カンヌ国際映画祭
■ベルリン国際映画祭
■ヴェネツィア国際映画祭
について整理整頓してみます。
なお、アメリカで開催される、アカデミー賞は、歴史も長く、マーケットへの影響力も多大で、重要な映画賞なのですが、主だった参加作品は~アメリカ映画~という基本方針があるため、国際映画祭としてのカウントからははずさせていただきました。
~グランプリの混乱、カンヌ国際映画祭~
1946年にフランス政府が、お隣の国ヴェネツィア映画祭に対抗して開催して以来何度か開催中止を経験しつつも、スキャンダルと共に成長してきたたくましい映画祭でもあります。
フランス南部のカンヌという都市で開かれるこの映画祭、同時開催として世界三大マーケットのひとつ、国際見本市が併設されているため、(三大映画祭と三大マーケットが同時開催されるのはカンヌだけ)世界中から多大な注目が集まり毎回、全世界から俳優や映画関係者が集まり、マスメディアでも大きく報じられます。カンヌ映画祭の最高賞はパルム・ドール(Palme d’Or)です。かつてはこの最高賞のことをグランプリとしていたのですが、1955年トロフィーの形にちなんでパルム・ドールと呼ばれるようになりました。アカデミー賞のことを、オスカーと呼ぶのにも似ていますね。
しかし、10年後パルム・ドールの呼び名はグランプリに戻されます。さらに10年後1975年には再び、パルム・ドールとされました。
では、カンヌ映画祭での最高賞はパルム・ドールつまりグランプリって事でいいのね。と、言いたいところなのですが1990年からの審査員特別賞にグランプリ(Grand Prix Special du Jury)の名前があたえられたため、(こちらも名誉ある賞なのですが)長らくグランプリというのがカンヌでの一等賞であったために最高賞との誤解が生まれ、混乱のもとになっているのです。余談ですが、パルム・ドールを受賞した作品は他の賞を受賞できないという決まりがあります。
~熊がシンボル、ベルリン国際映画祭~
1951年から分断時のドイツベルリンにて開催されるようになったベルリン国際映画祭。現地ではベルリナーレ(Berlinale)と呼ばれ社会派の作品が集まる傾向のある映画祭です。三大映画祭の中では最も大都市で行われることもあり沢山の人々が集まります。
このベルリン国際映画祭での最高賞は金熊賞(Goldener Bar)です。ベルリン市の紋章である熊にちなんでいるそうです。金熊賞に続く賞は、金熊名誉賞、銀熊賞、となります。毎年二月に開催されるこの映画の祭典、日本の作品では2002年に宮崎駿監督の“千と千尋の神隠し”が金熊賞を
2014年には山田洋次監督の“小さいおうち”で黒木華さんが主演女優賞を受賞しています。
~獅子、ライオンのヴェネツィア国際映画祭~
世界最古の歴史を持つ国際映画祭です。ただし、中断された期間があるため中断無く継続された最長の映画祭としては、エディンバラ国際映画祭に最古の座を譲ります。毎年、八月の末から九月初旬にかけて開催されるヴェネツィア映画祭は1942年までは最高賞が“ムッソリーニ賞”だったことからも推察できるように、政治的利用もみられ、第二次大戦後もしばらくは参加作品が激減したりしました。一方で沢山の日本映画を世界に紹介してくれたのもこの映画祭でした。長らく、ビジネス的観点よりも芸術的観点に力を注いできた中、2002年にはマーケットがもうけられ、商業映画への傾きも顕著になってきたといわれています。余談ですが、この映画祭に対抗して誕生したのが、お隣の国フランスでのカンヌ国際映画祭なのです。
このヴェネツィア国際映画祭での最高賞は金獅子賞(Golden Lion)です。受賞者には金色の獅子(ライオン)のトロフィーが贈られます。ベルリン映画祭では熊の色が金だったり銀だったりしますがこちらでは、獅子の色が金や銀になります。ですから、続く賞は銀獅子賞となります。
他にも、映画芸術に特別な貢献をした映画人に贈られる栄誉金獅子賞、北野武監督の映画“監督・ばんざい!”にちなみ、監督・ばんざい!賞というものもあります。こちら、ヴェネツィアでも審査員大賞をグランプリと呼びますので頭の中で整理整頓しておかないと、混乱をまねきやすいですね。
上載の栄誉金獅子賞とは、~獅子の中の獅子~という意味の賞で(Gareer Golden Lion)1982年には黒澤明監督の“羅生門”が選ばれ2005年には宮崎駿監督に贈られています。
どの映画祭も権威ある、人類の英知が散りばめられた意義あるものですがオリンピックの金銀銅、ミスコンテストのグランプリ、準ミス、会長、副会長・・・のようにはわかりにくかったそれぞれの最高賞を讃える気持ちを込めまして、まとめてみました。映画って本当に面白いですね。