「シルバー民主主義」ってなに?
- 2015/6/1
高齢化によって顕在化した問題
日本社会が急速に少子高齢化していることは広く知られていますが、その影響は政治に強くでています。高齢化に伴って人口構成における高齢者の数が増加したことにより、高齢者の意見が政治に反映されやすくなることを「シルバー民主主義」といいます。1985年から現在までの約20年間で高齢者の人口に占める割合は15%も増加し、2060年には高齢者の人口が60%を占めるようになるのです。
高齢者の人口が増えると、人口が多く投票率も高い高齢者にアピールした政策を行なう方が、政治家は当選しやすくなります。これがシルバー民主主義の問題です。20年前と比べて税収は15兆円ほど減っていますが、歳出は25兆円も増えており、増加分のほとんどは社会保障費です。その増加分を国債の発行、つまり政府の借金によって補っているのが現状です。しかし問題を先送りすればするほど、その経済コストは高まり続けていきます。地域間の「一票の格差」が問題視されていますが、世代間の不均衡問題にも注目しなければなりません。
若者の意見が政治に反映されない
政府の歳出のうち、増大しているのは社会保障費であり、その中でも高齢者の介護費用が一番増大しています。しかし有権者のうち60歳を超える人は44%に達しており、この年代層に対してアピールし、取り込むことは政治家にとって非常に大きなメリットになります。逆に選挙期間中、社会保障制度を是正するような高齢者に反発される政策を発表すれば、その政治家は支持基盤を失って当選しなくなる可能性が高くなります。
一方若者の投票率は下がる一方です。2012年の衆議院議員総選挙では高齢者の投票率が75%だったのに対し、若年層の投票率は38%しかありませんでした。高齢者の三分の二が投票しているのに対して、若者は三分の一しか投票していないのです。若年層の人口の少なさを加味すると、若者の意見はいっそう政治に反映されにくくなっていることが分かります。
問題は年齢構成の不均衡と若者の投票率の低下
これは非常に大きな問題なのですが、メディアでは若年層の投票率の低下が問題になることはあっても、高齢者にアピールした政策を行ない続けることで経済コストが上昇し続けてしまう、という問題の本質にはあまり注目されていません。
問題は年齢構成の不均衡と若者の投票率の低下にあります。対策としては、出生率の向上や若者に政治に目を向けさせ、投票率を増加させることが考えられますが、どちらも即効性はありません。また若者の投票率が上がったところで高齢者とは数に大きな開きがあるため、若者の意見が政治に反映されにくい構造は変わらないでしょう。若年層が政治に参加できやすい仕組みをつくっていくことが、政府に求められています。