「ナショナリズム」ってなに?
- 2015/6/5
再び問題になりつつあるナショナリズム
近年発生した様々な国際問題、例えば東アジア・東南アジア間での資源開発を巡っての領土紛争やウクライナ危機などが報道されるときに、必ず「ナショナリズム」という言葉が使用されます。ナショナリズムと言えば、なんとなく自分の国を愛する思想だ、と考える人が多いかもしれませんが、実際にはどのようなものなのでしょうか。どのような問題を生んでいるのでしょうか。
ナショナリズムの歴史
ナショナリズムとは、日本語では国家主義、国粋主義、民族主義などと言われます。使われ方によって意味が異なるのですが、日本人ならば日本人としての民族的な統一意識や日本という国家を一致させようとする思想を指して使われます。
このナショナリズムは、一般的に近代に入ってから誕生したと言われています。西洋の歴史を見ると、現在のような国民国家というものが生まれたのは、領主・王権・カトリック教会による重層的な支配の時代が終わってからのことだと分かります。商業を発展させたい商人たちと自国を強くしたい王によって、領主による封建的な支配は終わらされ、王政によって支配される国家が誕生しました。その一つがフランスですが、フランスでは、王族による多額の徴税と税金の浪費に反発した市民によって、革命が起きました。フランス革命です。
革命によって共和制がうちたてられましたがうまくいかず、フランスの国民は他国の脅威におびえるようになります。そこで活躍したのがナポレオンです。ナポレオンは自由・友愛・平等の精神でもってヨーロッパ中を支配していきます。このときに、古い身分制度や体制からの解放、主体性の回復、自由主義といった考えかたがヨーロッパ中に広がることになりました。ナポレオンが失脚したあとも、混乱したヨーロッパの中では自由主義的な改革が求められ、国民が一体となって新たな体制をつくろうとしました。これがナショナリズムの誕生だと言われています。
ナショナリズムの特徴
一般的にナショナリズムが強まるのは、他国の脅威にさらされたときだと言われています。また自国内での政策がうまくいっていないときに、国民の目を外に向かせるために、政府によってナショナリズムが誘導が行なわれることもあります。ナショナリズムが強まると、自国を守るために戦わなければならない、脅威は排除すべきだ、とうような過激な論調が高まっていく傾向があります。
それではナショナリズムは悪いものなのでしょうか?そうではありません。問題は極端なナショナリズムや過激な活動に結びついてしまうことです。今、世界ではどのような問題が起こっているのでしょうか。
今発生している問題
代表的なものはロシアです。ロシアはウクライナとの間で紛争を続けており、未だに解決にはほど遠い状況です。日中韓の間でも、歴史問題や領土問題からナショナリズムが高まり、関係が悪化しています。欧州でも反EUとも言える思想を持ったナショナリスト的な政党が台頭し、ナショナリズムは再び強まっています。
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現代はグローバル化が進み、企業や非政府組織、国際機関などの力が強くなり、国家の役割は昔に比べて小さくなっているというのが一般的な考えです。国家とか国境、民族などというまとまりはグローバル化の中でなくなっていくだろうと考えられていたのです。しかしこのような流れに対して反発する形で台頭しているのがナショナリズムです。今後ナショナリズムは過激化するのでしょうか、収束していくのでしょうか。過激な国際関係へと発展しない工夫が必要です。