欧州経済の「日本化」ってなに?「失われた20年」に重なる構図
- 2015/6/18
新聞を読んでいると、たびたび欧州経済が「日本化」していく、などということばがでてきます。この「日本化」とはどういう意味なのでしょうか?欧州の経済は今後どうなっていくのでしょうか?
日本化ってなに?
「日本化」とは、バブル崩壊後の日本のように景気の低迷、デフレ経済が長期化すること、またデフレ脱却のために中央銀行が金融緩和政策をとり続けることをさします。バブル崩壊後の日本は、国内の消費が縮小、消費性向が低下し、失業率も悪化しました。2000年代に入ってからは一時的に持ち直しましたが、リーマンショックの影響で再び景気が低迷し、20年以上に渡って低成長が続いています。これを「失われた20年」といいます。
日銀はこの低成長から脱却するために「超低金利政策」を行ないました。これは政策金利をゼロに近いほどに引き下げることで、銀行が企業にお金を貸しやすくするというものです。銀行がお金を貸しやすくなれば、それだけ企業が設備投資などにお金を使えるようになり、国内の消費が伸びる、というわけです。
しかし、日銀が思ったように貸し出しは伸びず、企業もお金を借りても投資に回しませんでした。そのため当初は一時的にしか行なわない予定だった超低金利政策を長期にわたって継続しなければならなくなりました。
そうして超低金利政策の効果が上がらなくなってきたため、日銀は続いて新規に通貨を発行し長期国債を購入することを宣言することで、市場のお金の量を増加させようとしました。これも家計や企業にお金を回すことで、消費を増加させようとしたものでした。しかしこの政策も、低成長から脱却できるほどの成果はあげていません。欧州はこれと同じ状況が発生することを危惧し、それを「日本化」「日本病」と呼んで、避けようとしているのです。
長期化する景気後退
しかし欧州は今では「世界経済最大のリスク」とまで言われています。欧州経済が低迷したのにはいくつか理由がありますが、代表的なものは「欧州債務危機」が発生したことです。これはEU内のギリシャなど南欧の国々がデフォルトの危機を持っていることが明らかになったことから、欧州全体に金融危機が広がる可能性が高まった危機のことです。
欧州各国の政府や欧州中央銀行は、債務危機を封じ込めるために、政府の財政や労働者の賃金を引き締めました。その結果危機は沈静化しましたが、景気は押さえ込まれ低成長期に入りました。ウクライナ危機やユーロ高が発生したのもあって、欧州地域の国民の間には、物価がこれ以上上昇しないのではないか、というマインドが広がっています。このままでは低成長が常態化し、日本の「失われた20年」のようになりかねません。欧州では様々な政策が打ち出されていますが、まだ低成長を脱却できるほどの効果は上がっていません。
欧州なんて遠い地域のことは知らなくても問題ないと考える人も多いかもしれません。しかし、グローバル化が進む現代では多くの日本企業が欧州に進出し、また欧州から日本へも進出しています。もしも欧州全体が低成長に陥って消費が落ち込んだり、企業の業績が悪化したりすると、それは日本にも大きな影響を与えます。欧州経済の現状には無関心でいられないのです。まずは世界経済がどういう状況にあるのか、知っておくことが大切です。