世の中を先読みするヒント 原油価格で日本経済がわかる!
- 2015/5/28
日本経済を理解する上で欠かせないのが原油価格です。
原油とは油田で採れた精製する前の石油のことです。
精製とは蒸留などによって不純物を取り除くことで、原油を精製すると、ガソリン、ナフサ、軽油、重油、LPガスといろいろな石油製品ができます。
ガソリンや軽油は燃料として使われ、ナフサはプラスチックの原料になります。
また石油は火力発電の燃料としても使われますので、日本経済の重要なエネルギー源でもあります。
【原油価格とは?】
原油価格とは原油の値段のことですが、産出される場所によって価格が違います。
・WTI
WTIはウェスト・テキサス・インターミディエイトの略でアメリカ合衆国のテキサス州、ニューメキシコ州で採れる原油の総称です。
原油価格としてテレビなどのメディアで紹介されるのはこのWTIの先物の価格であることが多いです。
WTI自体は世界で産出される原油の1%ほどでしかありませんが、WTI原油先物というのを世界中の投資家が活発に取引しており、原油価格を決定づける指標になっています。
・北海ブレント
イギリスの北海で産出される原油を北海ブレントと呼びます。
主にヨーロッパで使われる原油で、価格はWTIより高めであることが多いです。
・ドバイ原油
アラブ首長国連邦のドバイで産出される原油です。
アジアの原油価格の指標になっていて、日本が中東から輸入する原油の価格もこのドバイ原油の価格動向に左右されます。
【原油価格が変動すると?】
日本は消費する原油の99%以上を輸入に頼っています。(100%じゃないんです。日本にも油田があるんです)
そのほとんどはサウジアラビア、アラブ首長国連邦といった中東の国からの輸入です。
そのため、原油価格が上がると高い原油を買わなくてはなりません。逆に原油価格が下がると原油を安く買うことができます。
原油はガソリンから発電、プラスチックと用途が非常に広いので、原油が安くなればガソリン、電気代、包装に使われるプラスチック、紙(紙は木からできていますが、紙をつくる燃料として石油が大量に使われています)、輸送費(燃料が石油のため)とさまざまなものが安くなります。
日本が輸入する天然ガスは原油価格に連動する仕組みになっているので、原油が安くなれば、ガス代も安くなります。
逆に原油価格が高くなれば、これらのものはすべて値上がりです。
けれども、原油が安くなっているのに、それほどエネルギーやプラスチック製品の価格が下がらないこともあります。
これは外国為替の影響が大きいためです。原油はドルで取引されるため、いくら原油が安くなっても、円安ドル高になってしまうと、その分、払う円が減らないのです。
これは安い原油を買うために、まず高いドルを買わなければならないからで、為替の状況によっては、原油安のメリットを充分に受けられません。
ものすごい円高になっているときに原油価格が急落すれば、その恩恵は計り知れないのでしょうが……
【原油が安くなったのはなぜ?】
2014年7月には1バレル100ドルを超えていたWTI原油先物が2015年1月には1バレル40ドル台まで下落しました。
その原因はメディアや専門家のあいだでさまざまに囁かれていますが、よく聞かれたものが米国のシェールオイルです。
シェールオイルとは頁岩層という地下深いところに埋まっている原油のことで、長い間採掘する技術がありませんでした。それが技術の進化で採掘できるようになり、米国で実用化されました。
シェールオイルが広く流通すると、原油の供給が増えますから、原油価格は下がります。(数多く出回っているものの値段は下がります)
そのため、中東などの昔から原油を輸出していた国は原油輸出から得られる利益が減ってしまいます。それを防ぐために昔から原油を売っている国の集団であるOPECが産出する原油の量を減らします。これを減産といって、OPECは原油価格を維持するために、原油価格が下がると減産してきました。
ところが、米国産のシェールオイルで原油価格が下がっても、2014年後半はOPECが減産しませんでした。これは原油価格の下落で米国のシェールオイル業者を採算割れに追い込んで、シェールオイルをこれ以上掘らせないようにするためだといわれています。
【最後に】
原油価格が動いてからその影響が出るまでにはタイムラグがあります。日々原油価格に目を向けてその動向を把握していれば、景気の波が読めるかもしれません。
このまま原油安が続けば、2015年の日本の景気はよくなるといわれています。
それは原油安の良い影響が2015年後半に出てくるからです。