経済の「金融化」ってどういうこと?
- 2015/7/21
金融化とは
最近の経済ニュースや新聞を読んで、その全てが理解できる人は少ないのではないでしょうか。なぜならば、世界情勢はここ数十年で大きく変化し、経済は「金融化」が進んでいるからです。そのため経済のニュースは実体経済のことよりも、株式市場や為替の取引、様々な金融商品の動向など金融取引のことがメインになってきています。金融の世界は、専門でない人からすると複雑で分かりにくいものです。しかし、社会人として仕事をする上で知らないわけにはいきません。今回は、なぜ世界の経済が金融化しているのか、解説していきます。
そもそも世界の経済現象は実体経済と金融経済に二分できます。実体経済とは、企業や個人、政府が行なうヒトやモノのやりとりのことです。しかし企業や個人は全て自分のお金で投資・消費活動を行なうわけではありません。例えば、企業は銀行から先に借りたお金で工場をつくって商品を製造し、それを売ることで得たお金で借り入れを返済します。このように、お金を持て余している人(例えば投資家)からお金を欲している人(例えば企業)へとお金の動きを仲介する取引の仕組みことを金融といいます。
これで分かる通り、本来金融とは実体経済の動きをサポートするものです。しかしこの金融という領域が経済の中で肥大していくことで「格差の拡大」「経済の不安定性の増大」「バブルの発生」など多くの問題が発生しています。なぜ金融の領域が増大したのでしょうか。
金融化と証券化
1990年代から富裕層の莫大な資金で非公開の投資を行なうヘッジファンドが活躍するようになりました。1992年のポンド危機、1997年のアジア通貨危機などもヘッジファンドによる通貨売りが原因であり、これらの出来事は、人々に実体経済が金融によって大きく動揺させられることを強く認識させました。
金融取引は常に為替変動のリスクや企業や金融機関が破綻するリスクなど、様々なリスクを抱えています。これらのリスクを分散させることは金融取引での重要な問題なのですが、これを金融機関は「証券化」という手法によって乗り越えてきました。証券化とは債権を証券として市場に流通させることで、リスクを分散させる方法です。
通常お金を借りるときには、債務者(借り手)と債権者(貸し手)の間で借用書を用います。このとき債権者は債務者が返済不能(債務不履行)になるリスクを抱えなければなりません。このときに借用書を証券として自由に売買することができれば、債権者はリスクを手放すことができます。売った債券は投資家の手に渡り、投資家はリスクを抱えるかわりに、それ相応のお金を得ることができます。これが証券化の仕組みです。
こうした取引が拡大することで、リスクが分散されて安定した取引が行なわれると考えられましたが、実際にはリスクの所在が分からなくなったり、一部の市場での影響が金融市場全体に広がってしまうというデメリットもあります。こうしてあらゆる分野で証券化が行なわれ、金融の領域が肥大していきました。
投機的になる金融
こうした証券化の影響は、世界金融危機に引き金になりました。アメリカの不動産市場で発生したバブルは、アメリカの金融市場全体へ影響し、世界的な金融危機へと発展しました。ヘッジファンドは利益を拡大するために金融商品の技術革新を行ない、ハイリスクな取引を行なうことで世界の金融市場を大きく動揺させるようになりました。経済は周期的にバブルや金融危機を発生させ、その度に失業者が増え企業は倒産してしまうようになっています。
また、企業は事業を行うよりも投機的な取引を行なった方が利益を上げることができると考えて、資産の運用に傾倒しがちにもなります。個人でも潤沢な資金とノウハウを持ち有利な取引ができる富裕層は投資によって雪だるま式に資産を増大させ、資金に余裕がなく知識もない一般人との格差を拡大させていきます。経済の金融化は金融取引の円滑化にはなりますが、政府によって金融機関の行動を規制しなければ、また世界経済を大きく停滞させる危機を発生させることにもなりかねない重大な問題なのです。このような問題があることを知っていれば、毎日のニュースや新聞を見る目も変わるのではないでしょうか。