ビジネスマンの間で話題!トマピケティ著『21世紀の資本』
- 2015/4/24
異例のヒット『21世紀の資本』
欧米のビジネスマンの間で一冊の経済書が異例のヒットを遂げています。それが『21世紀の資本』です。フランスの経済学者トマ・ピケティによって執筆されたこの本は、一般向けのビジネス書ではなく経済書であり、英語版で700ページもある大著です。日本でも翻訳されたものが発売され、大型書店でも品切れになるほど好評です。
このような本格的な経済書がヒットしているのはなぜでしょうか。今回は、『21世紀の資本』ではどのようなことが指摘されているのか、解説してみたいと思います。『21世紀の資本』での主張は簡単には以下のようなものです。
資本主義の欠陥
この本では300年に渡るデータからの実証的な研究が行なわれています。過去のデータから、各時代で富の集中度はどのように変化しているのか分析しています。第二次世界大戦以前はトップ1%に富の20%が集中する不平等な社会でしたが、1930年代の世界大恐慌からその数値は落ちて、戦後世界の先進国は福祉国家としての政策を進めたことで6%〜8%程度の、富の集中度の低い社会を実現していました。
しかし、1980年代から先進国は高度成長の時代を終え、政府は膨らむ財政赤字を減らすために新自由主義的な政策を実行するようになりました。新自由主義的な政策とは、社会保障費の減少、企業への課税の緩和、規制の撤廃などのことですが、こうした政策の変化や企業の大規模化などの影響で、富の集中度は再び高まり、20%程度になっていることが分かりました。
富裕層への富の集中が加速している
ピケティはこの本の中でたびたび「r>g」という不等式を使います。これは「資本収益率>所得成長率」という意味です。資本収益率とは投下した資本からどれだけ利益を出すことが出来たか、というもので高いほどいいものです。所得成長率とは、個人の所得がどれだけ成長するか、という率のことです。ピケティによれば、資本主義社会においては「r>g」の不等式が成立するため、放っておけば所得格差は拡大し続ける、ということになります。これは資本主義というメカニズムの持つ欠陥の一つです。
具体的には、富裕層が資産運用によって大きく利益を得ていることなどから分かるでしょう。一般的な会社員はどれだけ働いたところで、給料が大きく伸びることはありません。しかし富裕層で莫大な資金を持っている人たちは、株式や国債、不動産、デリバティブなどを使った資産運用でさらに莫大な利益を生むことが出来ます。特に最近では金融商品の技術革新が起きて、投機的な運用による資本収益率の上昇には目を見張るものがあります。こうした背景から、富は富裕層へと集中しているのです。
富裕層への課税強化が必要?
ピケティによると、こうした格差の拡大は資本主義のメカニズムのもつ欠陥であるため、それは課税によって平等化していかなければならない、ということです。例えばアメリカでの最高の財産相続に適用される税率は、1980年に70%もあったにも関わらず、1988年には35%にまで下がっています。
格差の拡大をくい止め富の分配を行なうためには、資本収益率の縮小と資本課税の強化が必要です。世界各国が協調的に政策を行なうことで、富の適切な分配は実現することが出来るとピケティは主張しています。
以上簡単にトマ・ピケティ『21世紀の資本』での主張について解説してみましたがいかがだったでしょうか。ピケティの主張は実現することが出来れば確かに格差の是正ができるかもしれませんが、やや非現実的だという批判もされています。ピケティの主張の本質を知るには実際に『21世紀の資本』を読んでみるに限ります。これをきっかけに挑戦してみてはいかがでしょうか。