選ぶ時代 ~IB教育について~

  • 2016/12/19

世界での教育事情は様々で女の子ゆえに教育を受ける機会がなかったり、生まれた家の方針や状況、地域の風習などによって、受けることができる、受けることができない、といった現状の国もあります。

幸いなことに、日本では子ども達が教育を受ける権利(義務教育は大人にとっての“義務”であり子どもにとっては紛れもなく“権利”です)はあるのですが。
次のステップ、~どんな教育を受けるのか~という選択肢は(特に義務教育期には)先進国の中では数少ない、基本的には選ぶ余地のないものでした。

受ける、受けない、ではなく、どれを選ぶどう学ぶそれをどう生かす、といった、選ぶ教育の時代に突入してきました。

バカロレアって聞くけれど?

校風、学年カラー、地域性・・・などなどひとくちでは言い表せないほどの個性豊かな学校があるのですが、それはあくまでも文部科学省が日本中に統一した教育プログラム(例えば、何年生で円周率を習い、どの漢字を何年生に習得するといった)という点においては、同種のものであるとひとまず考えます。

そんな従来の日本教育に対して、もうひとつ選択肢が増えました。
それがインターナショナルバカロレア(国際バカロレア、略してIBともいいます)
選べるようになったといっても今のところこの二者択一であるのは現状ですが、大きな一歩であるのはいうまでもありません。
しかし、~自由を与えられると戸惑ってしまう~というのが私たち日本人の特徴でもあるのだとか。

多くの方が、自分自身は経験のない新しい選択肢、IB教育について、子育て主婦目線でご紹介いたします。

バカロレアってそもそもなぁに?

日本でもバカロレアという言葉が一気に認知されるようになったのはアベノミクスのひとつとして、政府が~2018年には国際バカロレアDP(ディプロマ)認定校を200校まで増やす~といった目標を発表してからです。

もともと、ヨーロッパにおいて、戦争中に(第一次大戦中)祖国から離れ、避難していた学生たちが、異国の地であっても学習を継続し、その後祖国に帰ってから、自国の大学へと進学する事がスムーズに出来るようにといった目的から(入学する学力や人間性を証明するもの)始まったとされます。(フランスでのバカロレアは今なお、大学進学者の国家試験となっています。)

やがて、国際化は進み人種や、国籍にとらわれず、地球市民といった立場から物事を理解し、解決していこうとする姿勢、そういった国際的に共通の教育プログラムを必要とする時代へと移っていきました。

スイス(ジュネーブ)に本部を置く、国際バカロレア機構はそうして、海外赴任に伴う帰国子女の帰国後の進学や、自国以外の国や地域への進学の際にも、共通の証明書を発行して世界中の大学の入学資格、または学部選考、単位認定などに用いられ
その内容、水準の高さから、大学によっては学費の免除などの評価基準にも使われることもあります。

このようにDP(ディプロマ)という認定証書が日本を含む世界各国の多くの大学で正規の入学資格として認められているのです。その数は100カ国以上2000校以上にのぼり ます。

パソコンを見ている子供たち
~何を大切にしている教育か~
これから我が子の受ける教育に関心のない親御さんはいないことでしょう。
その中で大きく三つの疑問があると思われます。

■IBの教育プログラムを受けると何が良いのか。
■IBでは日本国内ではどの学校で受けられるのか。
■IBは今なぜ注目されていて、今後どうなるのか。

この代表的な三つの疑問について、こちらでひとつひとつお話したい気持ちがあるのですが、同時に、多くの方が抱く基本的な疑問であるため、多くの解答が、書籍やインターネット上にて検索できます。 誠に勝手ながらこちらでは割愛させていただいております。けれども、そのご参考になるであろう情報をこちらでご紹介させていただきますね。

コンセプトのようなもの

国際バカロレア機構の理念をご紹介いたします。

選ぶということは、選ばないということをも選択することです。
ご家庭それぞれ、お子さまお一人お一人に考え、決断、実行していく自由と責任があるのですから、絶対的な答え、をご提示しない気持ちでおります。

あくまでもご参考になさってください。

■多文化に対する理解と尊敬を通じて、平和でよりよい世界の実現のために貢献する、探究心、知識、そして思いやりのある若者の育成を目的としています。
■世界中の児童、生徒に対し、他の人たちをその違いとともに理解し、自分と異なる人々にもそれぞれ理があり得ることが分かる、行動的で、共感する心を持つ生涯学習者となるよう働きかけています。
■すべてのIBプログラムは、人類共通の人間らしさと地球を共同で守る心を知り、平和でよりよい世界を築くために貢献する、国際的な視野を持つ人間の育成を目指しています。

~特徴として~
■教科の枠にとらわれない学び→ 各授業がリンクしていたりします。
■物事を深く、多角的に見て、考え、判断し、行動すること。
■目指す目標を明示してから学習を始めます。

具体的には、一例としてTOK(Theory of knowledge)知識の理論というものがあります。
それは、
知識とは何か
知識をどう獲得すればよいのか
知識をどう使いこなすのか

という課題について、児童、生徒が自分たちで問題を設定し自ら学習していきます。
これは、“正解のない問題”に対応していく力を身につけるための学習です。
日本での、~生きる力~とはどういうことだろうか・・という模索とも通じるものでしょうか。
IB教育の経験者の言葉をお借りすると、日本教育が“つめこみ型”と指摘されるとすれば、IB教育は“つっこみ型”とも言えるのではないか・・・という部分があります。

ひとつのテーマを、様々な角度や切り口、立場から分析し、探求し、グループでディスカッションし、それらをまとめもう少し大きなグループにプレゼンテーションしていきます。
また、違う意見に耳をかたむけ、尊重しながら歩み寄りや、交渉を学びます。

17歳からすぐに可能?
政府の発表ではDP(IBの終了証明書)を発行できる学校を200校に増やすというものでしたが、それまでは、多くの場合国内でDPを所得できるのはインターナショナルスクールと呼ばれる学校でした。
それら、インターナショナルスクールでの修了書を日本の高校でも取得可能とする場合、現実問題として、教員の育成、それから、言語の壁というのがどうしても立ちはだかります。
国際バカロレアでの指定言語は英語、フランス語、スペイン語の三つで、日本語は入っていないのです。(外国語としての選択に日本語は入っています)

その為、帰国子女や多国籍児をのぞいて、従来の日本教育を経験し成長されたお子さまが突然に、17歳から他言語での学習となると、学習内容のみならず、理解をする際や思考を組み立てる時に、大きな負担となることも考えられるのです。
(現在、母語である日本語でのIB取得も検討、交渉されております)

内容は素晴らしい教育プログラムですが、本来のお子さまの能力を、学習言語(アカデミックランゲージ)によって、瞬発力や柔軟性をなくし、場合によっては、自信を喪失させることになってしまうと本末転倒。

そこで、17歳から唐突に始まるプログラムではなく、段階を追って、(例えば高校一年生にあたる16歳の時にはIBの練習期間とも呼べる慣らしの一年が設けられています)
子供

■PYP 3歳から12歳
■MYP11歳から16歳
■DP 16歳から19歳

~どの学校でIB教育を受けられるのかしら?~と調べられたら、必ずこれらPYP,MYPそれからDPといった、おおよその年齢に応じた支度期間ともいえる(双方がつながっていくのですが)細分表示がされているかと思います。

17歳から突然に始めるというのは困難である場合にも(頭の良し悪しでは決してありません、多くの方がそうなのです)それ以前から、前振り、準備段階としても、発育に応じたPYP,MYPを受けてみるという選択があります。

著者の子どもも、PYP終了をしてから、一人は日本の中学へと進み、もう一人は今PYPの真っ最中の年齢です。
考え方次第ですが、日本人が日本の教育システムに回帰するのはそんなに難しいことではありません。

反対に、日本の教育システムから、海外での教育システムへの途中編入の方は年齢があがればあがるほど、やや壁が厚いともいえます。(と、いえども努力次第で越えられる壁でもあるのですが)

もしも、IB教育へのご関心があり、検討をされていらっしゃる場合、まずは、PYP,やMYPでの受講を体験されてから、最終的に、DP取得を選択されるのかされないのかを、決断する、という方法をおすすめしたいです。

~学習者像~
最後に、IBの提示している学習者像をご紹介します。

■探求する人
■心を開く人
■知識のある人
■思いやりのある人
■考える人
■挑戦する人
■コミュニケーションができる人
■バランスのとれた人
■信念のある人
■振り返りができる人

これらの学習者像は、小学生にあたる年齢PYPの頃から、何度も振り返り、自分自身をみつめ、他者を認める基準ともなっています。

国際バカロレアを選択するにしても、しないにしても、それぞれのご家庭での選択となるのですが、
もっと素朴に、子育て、自分育て、真っ最中の私たちの日常にも、大いに参考になるスタイルではないかと、感じています。

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