小学生の弟が、あるモンスターペアレンツにからまれた話(後編)
- 2017/1/16
小学生の弟が、あるモンスターペアレンツにからまれた話(前編)の続きです。
救ってくれたのは先生
「彼はやっていませんよ!」
声がしたほうを振り向くと、そこには仁王立ちした一人の中年女性。
それは、弟の担任で、あともう少しで定年退職を迎えるベテラン先生でした。
実は私の家は学校のすぐ近所だったので、どうやらこの大騒ぎをたまたま見かけた先生が尋常ではないと思い学校に報告しに戻ったようでした。
「なんだと、てめえか、くそばばぁ! てめえが口を出すことじゃねぇんだよっ!!」
「失せろ、ばばぁ! 」
二人の矛先が今度は先生に向かいました。
「彼はそんなことしていませんし、嘘もついていませんよ! そもそも、子供にそんな言い方はおかしいでしょう! Aさんにちゃんと話を聞いたのですか? 」
先生のうろたえることもない毅然とした態度を見た私は感動すら覚えました。母や弟も同じ気持ちだったに違いありません。
「うちの息子を毎回嘘つき呼ばわりしやがって! てめぇ、教育委員会に報告するからな! 」
「ええ、かまいませんよ。」
「明日からこんなバカ教師のいる学校なんか行かせねぇぞ! 転校させてやる! 」
「ああ、そうですか、どうぞご自由に! 」
もう何を言っても無駄だと思ったのでしょうか。恐るべきモンスター夫婦は「覚えてろよ!」とドラマかアニメの悪キャラのような捨て台詞を残し、A君を車に押し込むようにして帰ってゆきました。
一番の被害者は子供
先生は弟に「よく負けずにがんばったね。お母さんが守ってくれてよかったね。」と声をかけてくれました。その瞬間、感謝と安堵でいっぱいになったせいか、母の目から涙がぶわぁっと溢れだしました。
「落ち着くまで」とそのまま学校の保健室に連れて行ってくれた先生は母にこう話したそうです。
「実は、毎回こうなんですよ。A君はお父さんとお母さんが怖くて、いつも嘘を言って他の子のせいにするんです。そのたびに怒鳴り込んで来て、ちゃんと話し合おうとしても聞く耳を持たないんです。私はA君のことが心配なのですが、こちらもできることに限界があるので……」
その後、A君は両親に言われるまま転校していったようですが、私は子供心に「転校先の先生たちは気の毒だなぁ」と思いました。
当時は「モンスターペアレント」なんて言葉は知られていなかったのですが、今思い返すとあの夫婦はまさにそういう人たちだったのだと思います。
子供に教えるべきは感謝の心
私は、この出来事があって以来、先生方を尊敬していますし、私の息子が学校に上がってからも親身になってくれる何人もの素敵な先生方と出会うことができました。もちろん、先生の中にはニュースなどで取り上げられるような不祥事を起こす人もいることは確かです。でも、そんな人はごくわずかだと思います。
先生方だって人間ですから、時にはちょっと頼りなく感じたり、大丈夫だろうかとこちらが心配になったりすることもあるかもしれません。だからといってモンスターペアレンツほどでなくとも、鬼の首を取ったように責め立てたり、子供たちの前で先生の悪口を言ったりする最近の風潮は何か違うと思います。子供は先生方から何かしらの影響は受けることはあっても、見て育つのは結局のところ親の背中なのではないでしょうか。
一生懸命子供のことを考えてくださっている全国の先生方に、新学期からも頑張っていただきたいと思います。
そして、新入生のお母さん方、お子様が素晴らしい先生方と出会い、楽しい学校生活を送ることができるよう心から願っています。