昔話の空間 ~昔話で世界をのぞく~

  • 2016/8/31
昔話

むかーしむかし、あるところに・・・
Long long time ago・・・

昔話は世界中にあり、昔話を持たない民族というのは洋の東西を問わずひとつもないそうです。
人びとは、自分たちの土地の歴史や教え、教訓や知恵を物語にして口伝えで伝承してきました。
今に伝わる昔話の多くは、そうして口から口へとたいせつに伝えられてきたものです。

そう考えると、昔話は祖先から子孫への贈り物ともいえるでしょう。

民族によって、また土地によって、それぞれ独特の雰囲気、味わいがあって、趣がありつつも、その奥底には共通するものが申し合わせたかのように流れています。大変興味深い現象といえるでしょう。

今回はそのひとつ著者が名づけた山姥現象(やまんばげんしょう)についてご紹介させていただきます。

ヤガーばあさんとホレおばさん

ロシアの昔話には魔法使いのヤガーばあさん(Baba Yaga)がよく登場します。
バーバヤガーは森の中の一軒屋に一人で住んでいたりこわい人食い鬼だったりします。

見た目とはうらはらに、実は優しかったりもしますし反対に、一見優しそうに見えても、本性は恐ろしかったりと様々なパターンで描かれている魔女です。
このヤガーばあさんはロシア以外の昔話にはでてきません。

が、ドイツの昔話のでてくるホレおばさん(ホレおばあさん)や日本の昔話に登場する山姥(やまんば)との共通点も多く、まるで姉妹のようでもあります。驚くほどにそっくりです。

不思議な人物や擬人化した自然や動物たちの援助のおかげで主人公が難題を成し遂げめでたしめでたし、となるところもまた世界の昔話の共通点といえます。

もう一回もう一回

子どもの性質をご存知の方にはお馴染みの“くり返し”を望む子どもの心をつかむのもまた、昔話の共通点といえます。

冒頭でも触れたむかしむかしあるところに・・・とお決まりの定型句のようなもの、このお馴染みのフレーズを聴くことによって、子どもたちは大人とは違ったやり方で特別な緊張感と共に、現実とは違う世界に吸い込まれて行きます。

いつ、どこのことかわからないけれど、この世界ではないところで起こるおはなしであることを宣言し、そこから日常の世界とは違う昔話の世界が始まることを、聞き手である子どもたちに印象づけるのです。

そして、めでたしめでたし、おしまい・・・と、やはり締めくくりのフレーズによって、子どもたちはどんな冒険からも安心の場所へ帰って来るこっとができます。

これでオハナシが終わったということを宣言し聞き手である子どもたちを現実の世界に引き戻す効果があるのです。
そして、それらの昔話の終わりのほとんどが問題解決後のハッピーエンド、安堵感や、達成感にたどり着きます。

いつまでも幸せに暮らしましたとさ・・・
みんなで~~を食べました・・・

といった締めくくり方です。
名残惜しくても、これでおしまい。と気持ちを切りかえる助けをする締めくくりのお決まりも、世界中の昔話に共通しているのですから
語り手のおとなたちの、細やかな配慮、工夫が伝わってくるようです。

これらを、くり返しの法則、や行って帰る法則、と呼ぶ専門家もいます。

物語の中でも、前に出てきたことばや文を再生させたり、物語が展開していく状況や性格、その心理の動きに即して同じ意味のものが異なった表現であらわされたりと、表現上の多様性の中にも、”again again”もう一回もう一回、と、くり返しの法則がみられます。

この、くり返しは、複数のおはなしに登場する(定型文のような)ものと、ひとつの話の中にあらわれるものとの(大人には展開が少々まどろっかしいくらいに、少しずつ、くり返しの中に変化をつけて話が続きます)両方があります。

くり返しによって子どもたちは予測する時間を与えられ、思考力や思慮深さの元となっていきます。また、人間は既に知っていること、既知のことに再会した時に特別な愛着を感じる性質をもっています。再会の体験は理解力を深め、人間の精神を安定させます。昔話に“くり返し“がよく登場するのはこうした、精神の安定を要求する人間の本質からきているのかも知れませんね。

最後部優先という特徴

イギリスの昔話“さんびきのこぶた”をはじめ、初めに出発する長男、最後に登場する三男、最終的には末っ子が成功をする、という法則が世界中の昔話に見られるのも面白いところです。

三回のよく似ていて少しずつ違う、あるいは、一回目二回目はほぼ同じで、三回目だけはっきりと違うという展開により印象深くなります。くり返しのエピソードを用いて善悪の分別や、比較による対極化で、伝えたい事を際立たせているこういった手法は子どもを愛する人々の、経験と知恵から生まれた工夫だと感じずにはいられません。

子どもに受け容れられやすいもの、こと

玩具メーカーのみならず私たちは、未来そのものの子どもたちに何が必要だろうか、何を求めているのか、など思いを巡らす事は多いものです。

そんな時、子どもが喜ぶものであるからこそ、気の遠くなるような長きにわたって洗練されながら伝えられてきた昔話に思いをむけてみると、多くのヒントが隠れていることに気付かされます。

昔話に含まれる数々の特徴は自分たちの世界を再認し、足元をたしかなもにしてくれるでしょう。
やがて、さらに広い世界へ出ていく準備を身近な大人と共感しながら、培っていけることが昔話に親しむ醍醐味なのかもしれません。

生きていく方法を夢中になって愉しみながら習得していく自然物である幼い子どもに寄り添う時

英語圏の子守唄マザーグース(ナーサリーライム)にもくり返しの法則や怖いような優しいような不思議な生き物やハプニングと解決三度目に成功、などの多くの共通点がみられるのです。

こうした目で世の中を観察してみると子どもの発育に沿った、興味のむけどころが見えてきたりします。

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