集団的自衛権ってなに?
- 2015/7/31
個別的自衛権と集団的自衛権
2014年は安倍政権が、集団的自衛権を憲法の解釈を変更して容認するのかどうか、議論になりました。最終的に認めることで正式に合意されたのですが、集団的自衛権はややこしい概念であり、ニュースで聞いただけではなかなかすんなり理解できません。集団的自衛権とはどのようなものなのでしょうか。
そもそも自衛権には、個別的自衛権と集団的自衛権とがあります。個別的自衛権とは、他国から武力攻撃を受けた国が、必要な範囲内で防衛のために武力を行使する権利のことです。一方集団的自衛権とは、攻撃を受けた国だけでなく、その国と同盟関係などの密接な関係を結んでいる国が、防衛のために武力攻撃を行なう権利です。日本の場合は、同盟関係にあるアメリカが攻撃された場合に、日本には攻撃が加えられていなくても、武力を行使することが出来る権利になります。
これまで日本は、集団的自衛権は保有しているが行使できない、という微妙な立場を続けていました。しかし世界情勢の変化やアメリカの覇権国家としての国力の低下に伴って、集団的自衛権を行使できるようにしなければならないと言われていました。このような背景から、2014年の集団的自衛権の容認につながったのです。
日本が認めた集団的自衛権の内容とは
今回認められた権利の内容は、限定的なものでした。防衛省の発表をまとめると、以下のようなものになっています。①密接な関係にある他国が武力攻撃され、国民の生命や自由が奪われる明白な危険がある場合②国民を守るための手段が他にない場合③行使する武力は必要最低限である、というものです。日本は平和主義国家であり自国を防衛するためにしか武力を使えないと主張していた以上、全面的に認めることはできないのです。
この政府の決断に対して、多くの人から反対意見が出され、首相官邸前ではデモも発生しました。また多くの国民は、集団的自衛権の行使が容認されたことによって、自衛隊の役割が大きく変化してより軍事的な組織になるのではないか、自衛隊が海外で戦闘行為に参加するようになるのではないか、日本は戦前のように軍備化の道をたどることになるのではないか、という不安を抱いているようです。
しかし集団的自衛権は自衛隊の役割を大きく変えたり、軍事力を増大させたりするようなものではありません。あくまで自衛のために武力を行使できる範囲が広がるというだけのことです。
そのメリットとデメリット
もともと日本はアメリカに守ってもらえるのに、アメリカは日本から守ってもらえない、という奇妙な関係が続いていましたが、集団的自衛権の行使容認によって、これからはアメリカを守るという、対等な立場に立てるようになったと見ることもできます。これは外交カードが増えた、という意味で行使容認のメリットです。
また中国や北朝鮮が武力を拡大し、周辺国に脅威となっている中で、日本の防衛戦略をより柔軟に行なうことができるようになる、というメリットもあります。
それではデメリットはあるのでしょうか。考えられるものはいくつかあります。例えばアメリカは経済力が低下しており、その分軍事費も削減せざるを得ない状況になっています。世界の警察としての役割を持っていたアメリカは、その削減した分の軍事力を他国に肩代わりしてもらうという戦略の一つとして日本に集団的自衛権の行使を容認させたとも言われています。
このような背景があるため、例えば他国が攻撃を受けた場合という条件を拡大解釈して、アメリカの戦争に参加させられる事態が絶対発生しないとは言い切れません。また、憲法解釈を簡単に変更してしまうと前例ができてしまい、他の憲法の解釈も変更できるのではないかという問題にもなります。
たくさんの問題をはらんでいる集団的自衛権の問題ですが、これから本当に行使されることがあるのでしょうか。もしそのような事態が発生しても、日本は慎重に判断して行動しなければならないでしょう。集団的自衛権を行使しなければならない事態が、起こらないことが願われます。