「逆オイルショック」ってなに?
- 2015/6/1
2014年12月、高止まりしていた原油価格が急落して、世界中が動揺しました。「オイルショック」とは1970年代に、産油国が原油価格をそれまでの約4倍につりあげたことで物価が急騰した事件ですが、今回は逆に原油価格が一気に下落したことで世界中に影響を与えています。
なぜ原油価格が下落したのか
原油価格が急落した原因はいくつかあります。まず一つは中国を中心とした世界的な需要の不足です。中国の今年の成長率は例年よりも下がり、中国国内でも高度成長の時代が終わり、安定的な成長期に入るという見方が強まっています。今後不景気になっていくとはいえないが、これまでのような強烈な成長は見込めなくなったということです。近い将来、世界の石油需要はピークを迎えて頭打ちになるとも言われています。
またアメリカのシェール革命の影響もあります。シェールオイルは増産されることで価格が下落しており、また市場でのシェアを拡大するために原油と競争的に価格競争しています。シェールオイルがこのままの低価格水準で売られ続ければ、原油を生産する産油国は耐えられなくなる、という見方もあります。
背景には「地政学的リスク」の高まりがあります。産油国の多くが存在する中東では、民主化を求める声も強まっており、テロも発生しています。こうしたリスクから世界の先進国は「脱中東」を進めようとしており、特にアメリカはシェールオイルを原油に代替させることで、政治的安定と市場の確保の両方を実現させようとしている、という意見もあります。
日本での影響は?
原油が安くなるならば、資源輸入国である日本にとっては良い影響しかないのでは?と考えるのが普通でしょう。実際に日本にとっては、2015年の景気を上向かせる要因となると考えられています。また日本だけでなく、世界の先進国にとって景気の押し上げ要因となるでしょう。
しかしデメリットもあります。原油を輸出している産油国を中心とした新興国は景気の押し下げ要因となり、景気が減退しかねませんし、そうなれば新興国市場を対象としている日本の企業の業績低迷にもつながります。世界経済を牽引している新興国の景気が低迷すれば、世界経済も活発さを失うでしょう。
日本にとっても原油価格が下落すると物価が下がり、デフレ要因にもなりえます。日銀は2%のインフレ目標の達成を強く意識していますが、それが達成できなくなる可能性もあります。しかし世界的な目線で見れば、日本は確実に利益を享受できる側です。そして原油価格がこのまま下落し続けるのか、それともどこかでもとに戻るのか、価格が戻れば日本経済は打撃をうけることになるのか、そうした問題に注目してみてはいかがでしょうか。