世界銀行は世界の中央銀行ではない!誤解されがちな役割
- 2015/5/28
世界銀行ってなに?
「世界銀行」と聞くと、いかにも世界の金融政策を担っている世界の中央銀行であるように思ってしまいます。しかし世界銀行の役割は世界の中央銀行、というものではなく開発支援などにあります。また実質的に世界の中央銀行のような役割を果しているIMFという機関もあります。これらの機関の役割を知れば、世の中で起こっている経済の問題をより理解できるようになるのではないでしょうか。今回は、世界銀行の役割について解説してみましょう。
世界銀行の成り立ち
世界銀行が設立されたのは、第二次世界大戦が終わった1945年です。第二次世界大戦で世界の国々は大きな傷を負いました。世界経済の水準は大きく後退し、荒廃した世界経済をどううやって復興させるのか、ということが問題になりました。このようなことは戦争が終結する前から議論されており、1944年に行なわれたブレトンウッズ会議において、国際復興開発銀行(現在の世界銀行)やIMF(国際通貨基金)の設立が取り決められました。
国際復興開発銀行は当初、荒廃した国々が復興するための資金を貸し出す機関としての役割を持っていました。復興が必要な国に、IMFが短期的な資金の貸し出しを行なうのに対して国際復興開発銀行銀行は長期的な支援を行なう機関となって、IMFと国際復興開発銀行は相互に補いあうように、戦後の復興を資金面から支えました。
やがて戦後の復興が一段落していくと、植民地として支配されていたアジア・アフリカの国々が、宗主国に対して独立を宣言するようになりました。これらの国々はインフラや医療、教育など多くの分野での開発支援が必要だったため、国際復興開発銀行はこれらの途上国を支援する役割へと次第にシフトしていきました。時代が変化するにつれてその役割も多様化し、国際金融公社や国際開発協会、国際投資紛争センター、多国間投資保証機関などが世界銀行グループとして設立され、現在の世界銀行の姿になったのです。
その役割とは
世界銀行は現在、二つの目標を達成すべきものとして掲げています。一つは「貧困の撲滅」もう一つは「繁栄の共有の促進」です。
現在世界には、1日1.25ドル以下で生活する人が約12億人いると言われています。この一日1.25ドルというラインのことを「国際貧困ライン」と言いますが、その数は1990年の19億人から7億人も減少しています。割合で言うと1990年の43.1%から2010年には20.6%と、半分以下に減少しています。もちろんこの変化は世界経済の発展などの要因もありますが、世界銀行の活動の成果でもあります。世界銀行では、この国際貧困ラインに満たない生活基準しか持たない人を、2030年には3%にまで減らすことを目標にしています。
また、今世界では再び経済格差が拡大しつつあると言われています。先進国の中で富裕層と貧困層に、そして国家と国家の間でも裕福な先進国と貧しい途上国という形で広がっているのです。経済成長の成果を富裕層だけでなく所得の低い人たちにも分け与えようというのが第二の目標です。世界銀行は各国の所得下位の40%の人の所得を引き上げると主張しています。
活動内容とは?
世界銀行は、これらの目標を達成するために、途上国に低利・無利子で資金を貸し出したり、贈与したりしています。資金援助だけでなくインフラ、医療、教育機関設立の支援なども行なっています。さらに政策面での助言や、産業の発展に欠かせない技術支援なども、その重要な活動内容の一つです。
以上世界銀行の果している役割について解説しましたが、いかがだったでしょうか。私たちの知らないところで、たくさんの人が開発途上国の支援を行っているのです。私たちも先進国に住む人間として、どのような支援ができるのか考えてみるべきなのかもしれません。