女子にオススメの時代小説なんて、あるの?
- 2017/1/30
ひと頃、戦国もののゲームや幕末を舞台にした大河ドラマの影響のせいか、女子の間でも歴史に関心を持つ人が増えて、「歴女ブーム」なんていう言葉も耳にしましたね。
でも本格的時代小説となると、おじさん達の世界っていうイメージだし…。
そこで、初心者の女子におすすめの時代小説をご紹介。
●時代小説にホームドラマの風景。女子向けはやっぱり池波作品
ここ30〜40年の時代小説家のメジャーどころといえば、司馬遼太郎、藤沢周平、池波正太郎でしょうか。
この中でオススメなのは、もっとも女性ファンの多い時代小説作家ともいわれる池波正太郎の作品です。
若かりし頃の草刈正雄が主演で大河ドラマにもなった「真田太平記」も感動長編ですが、池波作品の醍醐味は短編作品。その三大シリーズが「鬼平犯科帳」、「剣客商売」、「仕事人・藤枝梅安」です。どれも、1冊の中に7編ほどの短編ストーリーになっているので、はじめての人もきっと読みやすいはず。
最初は「剣客商売」がいいでしょう。主人公は59歳の秋山小兵衛というおじいちゃん。その名のとおり小さな体なんですけど、これが無外流という剣術の達人。酒の飲み方、お金の使い方がスマートで、再婚した奥さんは41歳も年下の娘という、粋な主人公です。ここ数年は、藤田まこと、北大地欣也が主演でときどきドラマ放映されています。
毎回さまざまな事件に遭遇したり、これといった事件がなかったりしながら、息子が結婚して子供ができてと成長していくところは、従来の時代小説にホームドラマの要素が加わった感じ。ワクワクとほのぼの、そして人情がミックスした本編16巻+番外編5巻で、読み出したら止まらないシリーズです。ゴルゴ31でお馴染みの、さいとうたかをなど複数の漫画家のコミック版もあります。
●池波作品の新作が読めない今、オススメなのは?
残念ながら池波正太郎は、すでに他界したため新作は読めません。現役作家で誰か…と見つけたのが、佐伯泰英の作品です。
この人、若い頃はスペインで闘牛カメラマンをやっていて、帰国後、写真集を出版。その後、サスペンス小説を数冊出版しましたが、ほとんど売れませんでした。60歳になって最後の勝負で時代小説に挑戦し、これが予想以上に好評でシリーズ化決定。その後はあれよあれよという間に新シリーズを出版し、10年間で累計1,000万部以上という人気ぶりです。NHKでは3シリーズがドラマ化されました。
数ある作品の中でオススメなのは、「居眠り磐音(いわね)江戸双紙」シリーズです。どの作品もそうですが、池波正太郎作品と同様にホームドラマの要素がミックスされた読みやすい時代小説です。現在48巻まで続いていますが、文字は大きめで文字数は意外に少なめですので、思ったより読むのも楽ちんです。
写真は左から、山本耕史主演でドラマ化の「居眠り磐音(いわね)江戸双紙」シリーズ、初めての時代小説としてスタートした「密命」シリーズ、竹中直人主演でドラマ化もされた、主人公がおじいちゃんの「酔いどれ小籐次 留書」シリーズ。どれもホームドラマの要素をミックスした時代小説です。
ちなみに、佐伯泰英作品は、出版界では従来はありえなかった、“いきなり文庫本出版”の先駆けでもあります。一般に小説は、小説専門雑誌や新聞、週刊誌での連載→人気度を把握したうえで単行本出版→数年後に文庫本出版という流れになります。装丁もしっかりした高めの単行本で売り、しばらくしてお手頃価格の文庫本で再度売ることで、できるだけ利益をあげるのが常識でした。ところが、佐伯作品は、いきなり文庫本という方法で出版することで、お手頃価格でより多くファンを獲得する、いわば薄利多売方式を成功させた最初の作家いえます。その後、各出版社もこの方法に追随しているようです。
時代小説は登場人物の名前が覚えにくい、なんとことは置いといて、まずは池波作品、佐伯作品を手にとってみてください。