変わる価値観 “ハーグ条約について”

  • 2017/3/6

近年国際結婚者数の増加に伴いハーグ条約の話題をよく耳にしますが、どのような内容の条約であるのか、またこの条約が私達にどのような影響を及ぼすのかといった詳細についてはあまり話を聞く機会が無いのが現状です。

海外だけでの話だと思っていたけれど


PAKUTASO

実は日本も2014年1月24日にこの条約に批准したのです。
この条約が日本で批准される以前から、アメリカ等の同条約批准国で現地人と国際結婚をし、子を儲けた日本人の母親が、結婚生活の破綻に伴い、配偶者、あるいは元配偶者の承諾なしに子供を現在生活の拠点の有る国から日本に連れて帰国し、配偶者側から訴えられ、国際指名手配されるケースが多発し問題になっていました。
この様な問題が度重なり、最終的に日本でもこのハーグ条約批准に至り、同年4月1日からこの条約が適用されています。

具体的にはどんな条約?
このハーグ条約、正式には“国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約”といい、具体的には片方の親から勝手に国外あるいは国内でも常居留地から連れ出された16歳未満の子どもを、もう一方の親のもとに返還する事を目的とした条約なのです。
一つわかりやすい例を挙げてみましょう。
日本でフランス人男性と出会い、結婚後も日本でしばらく結婚生活、そして出産後に思い切ってフランスへ移住したAさん。
ところが移住後に生活面・経済面での大きな価値観の隔たりを実感し、相手との価値観のすり合わせがうまくいかずに不仲になったとします。この時点でフランスの法律に則って正式に弁護士を立てての別居手続きそしてその後改めて家裁での弁護士を立てた上での離婚手続きにて子供の親権・監護権を話し合って取り決める(ここまでで通常凡そ2年ほどかかるそうです)のが通常なのですが、もしAさんがこの正直煩わしいとも言える手続きをせずに無断で子供を連れて日本へ帰国すると、子供を父親のもとから“誘拐”したと見做され、子の父親である夫が訴える事でAさんは指名手配され、逮捕される上に子どもも本来暮らしていた父親の国に送還されてしまうのです。
“親が子どもを誘拐”という表現に違和感を感じる方も多々いらっしゃるのではないかと思うのですが、この条約の規定では“拉致”として認識されてしまうのです。
更に残念なことにこの“一方の親による国際的な子の連れ去り”行為が特に日本人女性に多いという情報は海外では有名な様で、配偶者と不仲になっていざ離婚を申し出たら、「子どものパスポートは絶対に渡さない、もう既に隠してある」と言われたという方も少なくないようです。実を申しますと筆者もそのうちの一人でした。

日本の現状・根強い母性信仰と母親のエゴ


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ここでまず日本とフランスの親権に対する考え方の違いを見ていきましょう。
時代が変わったといえどもやはり日本ではどこか男は仕事・女は家庭という感覚が残っているのか基本的に子育ては全般的に母親が担当するもので、父親は仕事が忙しくあまり子供の事に介入せず、経済的な援助に偏っている傾向が有ります。
その為か子供は常に母親と一緒にいるのが望ましいというある種の母性信仰的な部分が強く、更に離婚時においては日本は単独親権の国でしかも何も重大な問題が無い限りはほぼ自動的に母親に親権が渡ります。

守られるべき子供の権利
上で記載の通り日本では母親が単独で親権を取る事が多いのですが、フランスではまた事情が大きく異なっています。
フランスは原則として共同親権で、虐待等の子どもに実質的な危害を与える恐れが無い限りは、離婚後も性別に関係なく両方の親に親権及び監護権が認められます。見方を変えると、両方の親に平等に子供の養育に対する義務と責任が課されるので、日本で時々耳にする様な、元配偶者が養育費すら出さない為母親が高い保育料や学費等全ての支払いをしつつ人一倍働いてストレスを溜め、それが原因で子供への虐待に走ってしまうという事も減らせる可能性が有るのです。
そして日本においては離婚後に怒りや憎しみから元配偶者やその家族・親戚との関係を完全に絶ってしまい、子供を二度と合わせまいとする母親も少なくないようです。
しかし子供の視点に立ってみると、離婚後も父親である事に変わりありませんし、親の事情でもう片方の親に会うことも許されなくなるというのはあまりにも理不尽ですし、実際にそのような状況に置かれた子供達は、両方の親と過ごせる環境にある子供達に比べると、人から見捨てられる不安を持ちやすく、分離不安・ADHD・PTSD・学習障害等になりやすい傾向が有るそうです。
 
このような点を鑑みるとやはり、子供が慣れ親しんだ環境で日々を過ごすいう事は健全な成長に欠かせない事なのだと思います。

皆さんはこの内容を読んでどの様にお感じでしょうか。
私自身も現状離婚手続き中であり、この条約が適用されている環境の元で司法の判断により、一週間ごとに前の配偶者と交代で子供達を預かるという生活をしています。
もちろん子供達は現在就学中の為、遠くへ引っ越す事もままなりませんし、子供の父親である元配偶者とも子供の教育方針・課外活動等について定期的に話し合いをしなければならない事、また子供達が自立するまでは日本に帰る事も難しいという状況で、最初は理不尽に感じる部分も有りましたが、実際この状況を続けていくうちに、子供が両親のどちらともと一緒に生活出来る為安定した精神状態で過ごせている事、そして母親である私自身にとっても子供達の事を全て一人で背負い込むのでは無く、父親側にも子供に対する扶養・教育の義務が課される為、かえって精神的そして経済的負担が少なくて済むという事を実感しています。
日本でのハーグ条約に対する報道は、親権の捉え方が違うせいかどうしても否定的にとらえられてしまっている印象が有るのですが、柔軟に様々な角度から見ていくと決して悪いものでは無く、むしろ発言権の無い子供を守る素晴らしい法案なのだと個人的には理解しています。

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