よくニュースで見る「地政学リスク」って何のこと?
- 2015/6/18
特定の地域が抱える緊張
最近ニュースで「地政学リスク」という言葉を目にすることが増えました。特に最近では中東やウクライナ情勢の影響のことを指して使われることが多いようですが、具体的にはどういう意味なのでしょうか。地政学リスクによって、世界はどのような影響を受けるのでしょうか。
地政学リスクとは、特定の地域が抱えている政治的・軍事的あるいは社会的な緊張が世界に与えるリスクのことです。その地域のもつ地理的な特徴が、世界の経済に負の影響を与えることを意味します。例えば、2014年にはウクライナのクリミア半島を巡ってロシアとウクライナが対立しました。クリミア半島の地理的な条件が、ロシアにとって軍事的・経済的な要衝の役割を果していたために互いの利害が対立してしまったのです。このクリミア危機は2014年の世界情勢に大きな影響を与えました。このような地政学リスクは世界中に存在します。
今、世界で懸念されている地政学リスク
地政学リスクとして代表的なものが、中東情勢です。中東の一部の国は長年に渡って宗教的・政治的に不安定であり、中東の地政学リスクが急激に高まると原油価格が上昇して世界経済が減速する要因の一つになります。有名なものでは、第四次中東戦争をきっかけにした1970年代の石油危機や1990年のフセイン大統領によるクウェート侵攻、2003年のイラク戦争の勃発などです。また、最近では過激かつ巨大なテロ組織であるISIS(イスラム国)が重大な問題となっています。
日本の近くでも地政学リスクが懸念されている地域があります。それは中国と領土を接する周辺地域です。日本との間では尖閣諸島を巡る対立が続いており、南シナ海では海底に眠る資源を巡ってカンボジア、タイ、ベトナム、マレーシアとの間で対立が激化しています。南シナ海では各国の主張が複雑にからみ合っており、各国が一部の島を占拠して領有権を主張するなど、軍事衝突にも発展しています。
地政学リスクの二大要因
地政学リスクには「テロの脅威」と「地域紛争」の二つの要因があります。先ほど紹介した例の中で言うと、中東でのISISの問題はテロの脅威であり、南シナ海の領有権の問題は地域紛争の要因です。また北朝鮮の核開発問題などは、今のところ世界経済に影響するような問題にはなっていませんが、日本にとっては政治的・軍事的に大きな地政学リスクとなっています。
地政学リスクは、私たちの生活にはどのように影響するのでしょうか。例えば、中東情勢が悪化すると、原油価格が上昇し日本でもガソリン価格が上がります。また原油価格が上昇すると様々な資源・製品などの輸送コストが上昇するため、輸入製品が値上がりし、生活を圧迫することがあります。さらに問題なのは資産運用でしょう。株式市場や為替市場は世界情勢の変化を敏感に反映するため、保有していた企業の株が暴落したり、外貨建てで保有していた資産の価値が為替市場の変動で縮小したりすることがあります。地政学リスクがあると安定的な資産運用ができなくなるのです。しかし私たち個人の力では、地政学リスクをなんとかすることなどできません。重要なのは、日々情報収集して世界でどんなことが起こっているのか、知る努力を続けることではないでしょうか。