マイナス金利はなぜ発生する?
- 2015/6/16
マイナス金利ってどういう意味?
2014年「マイナス金利」という異常な状態が欧州で発生しました。マイナス金利とはとのような状態なのでしょうか。なぜ発生したのでしょうか。
そもそも通常、お金を貸した側がその貸し出しの資金や期間に応じて、借り手から受けとるのが金利です。しかしこれがマイナスになるということは、借り手は貸し手から金利をもらって資金を借りることができる、という異常な状態になってしまいます。このような状態が発生するのにはいくつかの要因があります。
日銀の政策による発生
日本の短期国債市場でマイナス金利が発生したときの要因を見てみましょう。短期国債とは政府が1年以内の短期の資金繰りのために発行する債券で、主に為替介入のために発行されます。現在日銀は量的・質的緩和政策を行なっています。量的・質的緩和政策とは、日銀によって市場に資金が大量に供給される政策のことです。本来は金利を下げることで市場への資金供給を増加させようとするのですが、今は低金利政策を行なっておりこれ以上金利を引き下げることはできません。そのためやむなく導入されたのが量的・質的緩和です。
日銀は緩和政策の目標を金利からマネタリーベース、つまり市場に供給する資金の量へと変更しました。そして国債や一部の投資信託商品の買い入れを行い、民間金融機関の当座預金を増加させています。この大規模な買い入れによって国債の金利はゼロ近くまでに下がりました。日銀の国債への需要は増加しましたが、民間金融機関も国債に対して一定の需要を持っています。そこで需要超過となってマイナス金利が発生したのです。
日銀は金融緩和のためにマイナス金利でも国債を購入しますが、民間の金融機関はなぜマイナス金利でも国債を買い入れたのでしょうか。民間金融機関は、莫大なお金を現金で保有することはできないため、現金にかわる流動的な資産を保有しておく必要があります。そこで流動性が高く安全で、日銀からお金を借りるときに担保にもすることができる国債を買い入れるのです。
しかしマイナス金利で買い入れると買入額よりも償還額の方が高くなるため、日銀には損失が発生します。そこまでして買い入れたのは、日銀は金融緩和を徹底するのだという姿勢を市場に示すためだったとも言われています。
欧州の政策では?
欧州中央銀行が取り入れたマイナス金利は、また大きく意味合いのちがうものです。欧州経済は金融危機後、景気低迷から抜け出せずにおり、デフレ懸念も高まっています。そこで欧州中央銀行は様々な金融政策を導入しており、マイナス金利政策はその一つです。
欧州の民間の銀行は、貸し出しすると貸し倒れとなるリスクを抱えてしまうため、安全で多少は金利がつくという欧州中央銀行の口座にお金を預けようとします。しかしそれでは市場に資金が供給されず投資や消費が増加しないため、欧州中央銀行は民間の銀行からお金を預かるときに手数料を受けとることにしました。これがマイナス金利です。民間銀行はお金を預けるときにお金を出さなければならないため、預けるよりも貸し出そうとするようになります。これがマイナス金利を導入した目的です。
日本で発生したマイナス金利と欧州で導入されたマイナス金利は、大きく性質の異なるものであるということが分かったと思います。しかし日本でも金融機関が貸し出しを渋るようになれば、このような政策が行なわれる可能性がないとも言い切れません。しかし中央銀行でマイナス金利を取り入れたのは、欧州中央銀行がはじめてであり、これが本当に有効なのかはまだ分かりません。今後の成果に注目してみる必要があります。