量的・質的金融緩和とは
- 2016/3/22
新たな金融政策が必要になった
アベノミクスの政策の一環として、新たな金融政策が行なわれました。これが量的質的金融緩和です。この政策によって、日銀は市場に多くの通貨を供給し、企業の設備投資や個人の消費を支えようとしています。これはどのような政策なのでしょうか。経済にはどのような影響を与えるのでしょうか。
そもそも金融政策の目的は、市場に供給する資金量を調整すること(金融引き締め・金融緩和)で経済の動向に影響を与えることです。金融を引き締めると、企業がお金を借りにくくなって投資が減り、賃金が下がり、消費が落ち、加熱した経済を抑えることができます。また金融を緩和すると、企業がお金を借りやすくなり、設備投資を行なうようになり、業績が良好になり、賃金が上がり、消費が増加します。
その金融政策の手法としては、3つの手法が中心になっていました。政策金利を上げ下げする公定歩合操作と、日銀が民間銀行に国債や手形を売買する公開市場操作、そして民間銀行が日銀の口座に預けておかなければならない準備率を操作する預金準備率操作がありました。
しかし金融の自由化や金融システムの変化などによって公定歩合操作と預金準備率操作は、金融政策として行なわれなくなりました。現在では公開市場操作が金融政策の中心となっています。公開市場操作では、日銀が民間銀行と国債などの売買を行なうことで、銀行が資金調達を行なう短期金融市場の金利を上下させることができます。しかしこの公開市場操作を継続した結果、金利がゼロ近くまで下がってしまい、これ以上金利を下げて資金を市場に供給することができなくなりました。そこで取り入れられたのが量的緩和です。
量的緩和とは?
量的緩和も行なうことは公開市場操作であり、民間銀行が保有している債券を買い取って市場にお金を供給しようとするものです。しかしその目標を金利を下げることではなく、
マネタリーベース=日銀が供給する通貨の量にしている、という点がこれまでの金融政策と異なる点です。
量的緩和で民間銀行がもつお金の量が増えると、将来的にそのお金が企業や個人に貸し出されて使われ、景気が良くなり物価が上がっていくだろうと予想することができます。そうなると将来の物価上昇の予測である「予想インフレ率」が上昇します。予想インフレ率が上昇すると実質金利が下がって、人々はよりお金を使おうと思うようになります。
ここは少しややこしい点ですが、例えば今民間銀行にお金を預けると2%の利息がつくとします。つまり金利が2%であるということです。しかし予想インフレ率が2%以上あると利息よりもインフレ率が高くなるため、銀行にお金を預けると損してしまいます。つまり銀行の金利よりも予想インフレ率が上昇すれば、人々は今お金を使おうと思うようになるのです。
量的質的緩和とは?
ここまでが量的緩和政策ですが、現在行なわれている量的質的緩和政策とはこれをさらに発展させたものです。量的緩和では従来のような短期国債、CPなどの伝統的資産だけでなく長期国債や投資信託までも買いオペの対象としています。さらに質的緩和として、長期国債の借り入れ対象の拡大と、平均残存期間の拡大を発表しています。
簡単にはより実質金利を下げて市場にお金を流通させるために、緩和の対象を拡大しているということです。この政策での結果はまだ明らかではありませんが、量的質的緩和によって物価を2%上昇させデフレ脱却することが目指されています。