日本の借金問題ってなに?「国の借金1000兆円」にひそむややこしさ
- 2016/2/29
「日本は世界で一番の借金国」「日本の国民は一人当たり800万円の借金を背負っている」という表現を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?実際に新聞やTVでも、そして財務省などもこのように発表しています。
これを聞くと「日本の財政はそんなに危ないの?」「これは増税してもしょうがないな」と考える人もいるかもしれません。しかし、これは間違った考えかたです。政府が財政を健全化させるために、意図的にこのような表現をしているとも言われています。
今回は「日本の借金」に関する正しい理解を深めていきましょう。
「国の借金」って誰の借金?
日本の「借金」と言う以上、日本にお金を貸している「債権者」と借りている「債務者」がいるはずです。日本の場合は、お金を借りている債務者は政府であり、お金を貸している債権者は国民となります。つまり、正しくは「国の借金」ではなく「政府の借金」であり、「国民一人当たり800万の借金」という表現は明らかに間違ったものであることが分かります。この表現では、お金を貸している側であるはずの国民が、まるでお金を借りている側であるかのように錯覚してしまうからです。
数年前、ギリシャ政府の財政破綻がきっかけになって欧州財政危機が起こりました。ギリシャをはじめとして財政赤字が累積していた南欧の国々は、海外から借金をして政府を運用していました。そのため財政赤字が一定以上になったことで財政破綻につながってしまったのです。
日本の場合はどうでしょうか。日本は「借金大国」であるような言い方がされますが、日本が海外に保有する「対外純資産」の量は世界第一位を20年以上継続しています。「国の借金」と言う場合、正しくは対外負債がこれにあたりますが、2013年度末での対外負債は500兆円あります。これだけ見れば莫大な借金があるように見えます。しかし対外資産が820兆円もあるため、その差額の320兆円が日本の対外純資産ということになります。つまり世界中に保有している資産や債権の量が世界最大であるということです。「借金大国」とは真反対ですね。
累積する赤字国債
このように、日本は借金大国なんかではないのにまるで借金大国であるような表現が繰り返されるのは、増税はやむを得ないことなのだ、という世論を形成していくためです。増税をすればもちろん政府の収入は増えるため財政は健全化しますが、その分国民の生活は圧迫されてしまいます。
このまま政府が財政赤字を増やし続けても、債権者のほとんどが日本国民である限り、日本が破綻することはありません。しかし財政健全化のために緊縮財政になり、国内にまわるお金の量が減少すれば、日本の経済はもっと疲弊していくことになります。こうした事態を避けるために、まずは日本の借金問題に対する正しい理解を広めていくことが大切です。