金融政策の3つの手段
- 2015/7/17
金融政策とは?
20年も続くデフレから脱却するために、日銀は金融政策を実施し続けています。金融政策は日本経済に好影響も悪影響ももたらしますので、現代の日本人は基本的な仕組みだけでも知っておかなければなりません。今回は金融政策の3つの手段について解説します。
金融政策とは、世の中に出回って国民の消費活動や企業の投資活動を支えている通貨の量を変えることで、経済の動きを変化させる政策のことです。日本で通貨の発行ができるには日銀だけであるため、金融政策は日銀によって行なわれています。
現在はデフレといって、景気が低迷することで物価が下落し、企業の収益が悪化し、賃金が下がり、消費が落ち込み、さらに物価が下落するという状態にあります。このような状態の時には世の中のお金の量を増加させて(金融緩和)、消費や企業の投資を促進させなければなりません。逆に景気が加熱して物価が上昇、企業収益が好調になり、賃金が上がり、消費が増大する状態のことをインフレと言いますが、インフレの時にはお金の量を減らす(金融引き締め)政策が必要になります。その政策の手段として、大きく3つのものがあります。
金利の上げ下げ
金融が自由化されるまで中心となっていたのが、金利の上げ下げ=公定歩合操作という政策です。公定歩合とは、日銀が民間の金融機関に対してお金を貸し出すときに適用される金利のことで、1994年までは民間銀行の金利は、日銀の固定歩合と連動されるように規制されていました。
例えばデフレ化では、日銀は公定歩合を引き下げます。連動して民間銀行も金利を引き下げるため、企業や個人はお金が借りやすくなります。すると消費や投資が増え、世の中のお金が回りだすのです。
しかし1994年から金融が自由化されて、民間銀行は自由に金利を設定できるようになりました。そのため民間金融機関は短期金融市場で資金調達を行なうようになり、公定歩合の操作は金融政策としての役割を果さなくなりました。
国債や手形の売買
金利の操作が金融政策としての役割を果さなくなったため、金融政策は国債や手形の売買=公開市場操作に中心を移しました。これは日銀が民間銀行に国債や手形を売買することで、民間銀行つまり市中のお金を吸収したり供給したりし、世の中のお金の量を調整するという政策です。
日銀が民間銀行に国債・手形を売却して、市場に余っているお金を吸収することを売りオペ、逆に民間銀行から国債・手形を買い付けて市場にお金を供給することを買いオペと言います。
従来は公開市場操作によって、短期金融市場(無担保コール翌日物)の金利を上げ下げしていました。しかし最近ではゼロ金利政策が続けられたため、短期金利がゼロに近づき、金利を対象とした金融政策を行なうことができなくなりました。そこで、公開市場調査を行なうことで、民間銀行が日銀に保有している口座のお金を増加させる政策=量的緩和政策が金融政策の中心となりました。
準備率の操作
民間銀行は預かったお金の全てを現金として保有しているわけではありません。実際に保有しているのはほんの一部です。しかし、預金の引き出しのためにある程度は現金を保有しておかなければなりません。民間銀行は一定の割合の現金を、日銀の口座に無利子で預け入れなくてはならないことになっており、この割合のことを支払準備率といいます。
日銀は支払準備率を上げたり、下げたりすることで、民間銀行が貸し出しできるお金の量を調整し、世の中のお金の量を増やしたり減らしたりすることができます。しかし1991年以降準備率の変更は行われておらず、支払準備率操作は金融政策として実施されていません。