今後日本は「供給力不足経済」になる?
- 2015/7/24
円高によって隠されていた供給力不足
アベノミクスの金融政策によって円安・株高になり、輸出企業や大企業は潤いました。長年のデフレ経済によって供給過剰、需要不足となっていた国内も円安・株高によって改善されるかもしれません。円安・株高でデフレを脱却すれば日本の経済は復活するのでしょうか。
デフレであるということは企業の生産能力が過剰であり、国民の需要が低くなっているという状態です。需要が低いために物価が下がって企業収益が悪化する、というスパイラルに陥ります。しかし、今回の政策が成功して円安になると、輸出企業は製品の輸出によって業績を回復させ、その分社員の賃金は上がり、需要が回復する可能性があります。ここまではいいことなのですが、景気が回復すればデフレによって隠れていた日本の「供給力不足」が起きる可能性があります。
円安で日本企業は潤っている?
円安のによる恩恵は輸出価格を抑えることができることですが、反面輸入価格が割高になるというデメリットも抱えています。日本は内需が高く輸出依存度はそれほど高くないですが、それでも円安による恩恵は大きいものと考えられていました。しかしリーマンショック後の円高で日本の企業は多くの生産拠点を海外に移しています。当然海外で生産して輸出しても、円安の恩恵は受けられません。そのため当初考えられていたよりも、円安による効果は少ないものだったと言われています。
しかし昨年末になってようやく輸出量の増加も見られて、企業収益にも好影響が与えられるようになっているようです。また輸入価格上昇によるデメリットですが、日本は輸入への依存度が輸出依存度よりも低い上に、海外にドル建ての資産を蓄積しているため、円安によるデメリットはそれほど大きくありません。円安によって輸出が増加すれば、企業は設備投資を拡大しなければなりません。つまり供給力を増強しなければならないのです。ここで顕在化するのが供給力不足という問題です。
供給力不足とは?
供給力とは企業の持つ工場などの生産設備や、保有する労働力などのことです。しかし日本は長年供給>需要の状態が続いたため、企業は供給力の削減に取り組んできました。リストラクチャリングと呼ばれるのがそれです。リストラによって低収益部門を廃止したり、正社員を削減して低賃金かつ流動的に扱うことができるバイトやパート、派遣社員などの非正規雇用を増加させました。
しかし日本は少子高齢化社会に入っており、これから労働力は減少し続けていきます。つまり供給力は減り続けるのです。円安によって景気が上向いたことで、日本社会の少子高齢化という構造的な要因と、デフレギャップを埋めるための企業によるリストラという要因が重なりあった供給力不足という問題が現れるのです。
これはリストラした企業が悪いわけではありませんが、今後デフレ脱却に成功すれば企業は供給力不足に苦しむことになってしまいます。この問題を解決するには、女性・高齢者という労働力の活用や移民政策などを、政府と企業の二人三脚で進めていかなければならないでしょう。