中国の成長率低下にはどういう意味があるのか
- 2015/8/18
成長率の低下
2014年の中国の実質GDPの成長率は目標の7.5%を下回り、7.4%となりました。中国の成長率が7.5%を下回るのはアジア通貨危機が起きた1998年以来16年ぶりで、世界では中国は景気後退に入るのでは、と言われています。中国の経済成長はなぜ鈍化したのでしょうか。
中国経済のマイナス要因
・産業構造のサービス化
一般的に、ある国が途上国から先進国へと発展する過程では、第一次産業→第二次産業→第三次産業と、産業の中心が移り変わっていくと言われています。経済学ではこれをペティクラークの法則と言いますが、中国経済もこの過程をたどっており、徐々に第三次産業=サービス業中心になってきています。特に最近ではアリババなどのIT関連企業が急成長しています。
サービス業の割合が増えているということは、中国の経済が高度成長期を終えて安定的な成長期へと移行していることをあらわしています。つまりこれからは今までのような急速な成長は見込めない可能性が高いということです。
・生産年齢人口の減少
中国は人口抑制政策として「一人っ子政策」を行なってきました。この政策の結果、中国は世界にまれに見るはやさで少子高齢化へと進んでおり、すでに2012年からは生産年齢人口が減少に転じています。労働力が減少するため、当然経済成長にも影響します。
・自動車の規制
持続的な経済発展によって、中国の国民の所得は確実に上昇しています。しかし国民の自動車保有台数は2013年末時点で1億3000万台と、10人に1人以下の人しか保有していません。通常所得の増加に伴って自動車への需要も高まり、販売台数も増加するのですが、中国の諸都市では自動車の増加に伴った深刻な大気汚染や交通渋滞が問題化したため、自動車の購入規制が実施されています。自動車が都市によって何万台まで、と制限されるため、自動車関連企業にとっては痛手になっています。
・不動産市場の鈍化
一番の問題は不動産市場の鈍化です。金融緩和政策によって不動産市場に大量の余剰資金が流れ込み、不動産バブルが発生していました。しかし住宅の在庫が増加し、住宅投資が減少、不動産関連企業が影響を受けました。
それほど問題視するものでもない?
世界の経済で重要なポジションをもつようになった中国の経済が低成長に入ることは以前から懸念されていました。実際に景気減速の兆候は出ているのですが、習国家主席は景気減速ではなく安定成長期に入っているのだと発表し、これからは安定成長期へと軟着陸していけるような政策を行なっていくようです。政策が成功して、世界経済でより重要な存在となっていけるのか、それともバブルを崩壊させて危機的な状況に陥ってしまうのか。どちらにしても2015年が中国経済にとって転機の年となるでしょう。