世界経済のキーワード 量的金融緩和ってなに?
- 2015/5/28
最近の世界経済を読み解く上で重要なキーワードに「量的金融緩和」というものがあります。
円安になったり、株価が上がったりすると、新聞やニュースで「ECB(欧州中央銀行)が金融緩和したことで投機資金が流入」なんていうふうにいわれます。
でも、そんなことをいわれても、正しい知識がないとわかりません。
上の例では、欧州中央銀行、金融緩和、投機資金と、短い文のなかによくわからない言葉が3つも出てきています。
ECB(欧州中央銀行)はヨーロッパの中央銀行で、日本でいうと日本銀行が中央銀行です。ECBはユーロを発行しているところです。
投機資金とういのは、ヘッジファンドに代表される大きなリスクをとって、大きな儲けを出そうとする市場参加者のことです。
では、金融緩和とはどういうことでしょうか?
【世の中をお金であふれさせる】
金融緩和とは、お金を出回りやすくすることです。
ここではとくに、量的金融緩和とか量的緩和と呼ばれる金融緩和政策について説明します。
中央銀行の役割として、金利のコントロールというものがあります。
景気が良くて企業が借金してどんどん工場を建て、土地が値上がりして、マンションがブームになるようなときは、物の値段がどんどん上がっていきます。これを抑えるために中央銀行は金利を上げてお金を借りにくくします。
熱い景気を冷まして適度な成長にして、過度のインフレを防止するためです。
逆に、景気が悪くて企業はお金を貯め込むだけで、給料は上がらず、土地の値段が下がって、マンションなんて誰も買わないというときは、物の値段がどんどん下がっていきます。これを抑えるために中央銀行は金利を下げてお金を借りやすくします。
企業が工場を建てたり、マンションを買うときにローンを組みやすくするためです。
物価が上がっていくことをインフレーション(インフレ)、物価が下がっていくことをデフレーション(デフレ)といって、どちらもいきすぎると望ましい状態ではありません。
適度な成長を考えると、前年比2%程度のインフレ状態がよいとされています。
そこで、量的金融緩和です。
これはデフレを防止するために、どんどん金利を下げるのだけれど、誰もお金を借りようとしなくて、さらに金利を下げたいのだけれど、それ以上下げられないときに、最後の手段として、中央銀行がどんどん世の中にお金を流していく政策です。
具体的には、普通の銀行が持っている資産を中央銀行がどんどん買います。すると、銀行の運用している資産が現金に変わります。銀行は利子で稼いでいるので、利子の付かない現金は持っていても意味がありません。そこで、現金を企業や住宅がほしいと思っている人に低い利子でもいいから貸して、少しでも稼ごうとします。
すると、世の中にお金がまわりだして、景気が良くなるというわけです。
【量的金融緩和の効果は?】
いくら量的金融緩和をしても、人々の心に「これから景気が良くなるんだ」という期待が芽生えないと、デフレから脱却することは難しいものです。
ですが、派手に量的金融緩和をすると、通貨が安くなって、株価が上がります。
これは金利が極端に下がるので、借金して株を買っても配当で儲けが出るようになるためや、金利の低い通貨を借りて、金利の高い通貨で運用しようとする人たちが現れるためです。
この状態がニュースなどで騒がれると、なんとなく景気が良くなってきているのかな、と感じられるようになります。また通貨安で、海外でモノを売っている大企業が儲かるので、大企業の従業員の給料が上がります。
けれども、量的金融緩和をしすぎるとバブルが発生し、やめたときにものすごい不景気になってしまいます。
量的金融緩和をするとある程度はバブル的なところが出てきますので、やめるとこれがはじける恐れがあります。量的金融緩和をやめることを出口戦略といって、これがもっとも難しいといわれています。
【今の世界経済は?】
現在、ユーロ圏と日本は量的金融緩和をしています。とくに日本は大胆な金融緩和をして経済を回復させようとしています。(アベノミクスと呼ばれたものがだいたいこの量的金融緩和だと思っていいです)
中国の経済も元気がなく、金利を下げています。
アメリカだけは反対に量的金融緩和をやめて金利を正常に戻そうとしていて、20015年の夏から秋にアメリカは金利を正常に戻す第一歩を踏み出すといわれています。
ですが、そのときに何が起こるのか誰にもわからず、世界中がアメリカの金融政策を、固唾を呑んで見守っているような状態です。