グローバル企業の税金逃れって?
- 2015/6/16
グローバル企業の節税対策
世界を股にかけて巨大な事業を行なう「グローバル企業」ですが、その特性を活かして巧みに法人税を回避していることが問題になっています。しかしこのようなグローバル企業の行なう節税対策は法律に違反する「脱税」ではないため、現在のルールでは取り締まることができません。グローバル企業の節税対策はどのような仕組みになっているのでしょうか。
「ダッチ・サンドイッチ」
グローバル企業の納税回避の戦略として有名なのが「ダッチ・サンドイッチ」という戦略です。ダッチとはオランダのことをさしますが、オランダは企業への課税に寛容な国です。グローバル企業はオランダにペーパーカンパニーをつくり、世界中で稼いだお金をオランダに集めて資産への課税を回避します。そしてその資産を「タックスヘイブン」と呼ばれる地域に移し、隠し資産にします。何千億円、何兆円という規模でビジネスを行なうグローバル企業にはそれだけ巨大な税金が課せられます。企業としては、少しでも納税義務を回避したいところです。そのため、このような一見回りくどいような戦略をとって、納税を回避しているのです。
「タックスヘイブン」には、マレーシアのラブアンやイギリス領のバミューダなどがありますが、こうした地域では法人税が非常に低く設定されており、また税制や資金の動きに対して不透明なシステムになっているため、資産隠しに多く利用されています。しかし世界各国の政府からすれば、莫大な額の税金が入って来ないため、なんとしてでも納税させたいと考え、対策を進めています。
政府や国際機関の対応
タックスヘイブン以外でも、香港やシンガポールなどは法人税が低く、企業にとって魅力的な国です。こうした国に企業が流れることを避けたい国の政府は、自国の法人税を切り下げようとします。こうして起こったのが法人税の切り下げ競争です。日本でも世界水準より高いと言われる法人税を切り下げる、法人税の改正が進められています。しかし、世界各国が法人税を切り下げれば結局税収が減るだけ、という結果しか残りません。
そのため最近ではOECD(経済協力開発機構)で、各国で協調して対策が練られるようになってきています。例えば各国の税制や企業に対する規正を一致させることや、資産の動きを透明化していくことが検討されています。また、多国籍企業がインターネット上に広告を載せる際に課税するグーグル税という制度も導入されつつあります。新しく規正がつくられれば企業がそれをすり抜ける対策を講じる、という動きが続いていますが、今後も当分は企業、政府互いの利害が一致する妥協点が模索されていくでしょう。