日本経済を理解しよう! 最近よく聞くインバウンド消費ってなに?
- 2015/7/17
2014年の消費増税後、今ひとつ勢いを取り戻せない日本経済ですが、そんな中まるで救世主のように盛り上がっているのがインバウンド消費です。
インバウンドとは外から中に入ってくるという意味で使われる言葉です。逆に中から外へ出ていくことはアウトバウンドといいます。
インバウンド消費とは、日本を訪れた外国人観光客が日本でお金を使うことです。
【訪日外国人が増えたわけは?】
円安とビザ発給要件緩和が日本を訪れる外国人を増やしているといわれています。
とくに中国と東南アジアからの観光客が増え、そのなかでも中国人の消費意欲には驚かされるばかりです。
・円安の影響
円安が進行すると海外から見た日本のモノの値段は安くなります。
2012年夏には
1人民元=約12円でしたが、
2015年は
1人民元=約19円まで円安が進行しています。
1人民元=12円のときに、1万人民元を持って中国人が日本にくると、12万円分の買い物ができます。
円安が進行して1人民元=19円になると、1万人民元を持って日本にくれば、19万円分の買い物ができます。
1人民元=12円のときに比べて、同じ1万人民元で7万円分も多く買えます。
よくテレビのインタビューで中国人観光客が「中国で買うより日本で買ったほうが安い」といっているのはこういうわけなのです。
・ビザ発給要件緩和の影響
日本政府は2020年に向けて訪日外国人旅行者数を2000万人にするという目標を掲げています。
その具体策として中国や東南アジアの国々に対してビザの発給要件を緩和しています。
中国人が観光で日本にくる場合、ビザを取得するのに年収などによる制限があります。
つまり、富裕層でないと個人観光ビザが発給されないのですが、日本政府はその制限を引き下げています。
これによって日本に観光でこられるようになった中国人が増えたのです。
タイ、マレーシアは観光目的の短期滞在ならビザの取得が免除され、ベトナムやフィリピンでも日本に観光でくるためのビザがとりやすくなりました。
【インバウンド消費の恩恵を受けるのは?】
インバウンド消費の中心が中国人だということはよく知られていますね。
春節(1月か2月にある旧正月の休暇)や国慶節(10月1日の中国の休日、一週間連休になります)の休暇で訪れた中国人観光客が銀座あたりで爆買いする映像はメディアですっかりお馴染みになっています。
中国人観光客は高品質、安心安全、ホンモノの製品を求めてとにかく買い物をします。
そのため、高級品を扱う店、代表的なところでは百貨店がインバウンド関連の売上を伸ばしています。
その他にも家電量販店からディスカウントストア、ドラッグストアまでインバウンド消費が盛り上がっています。
三越伊勢丹、松屋(銀座の百貨店)、ビックカメラ、ABCマート、ドンキホーテ、マツモトキヨシといった企業がインバウンド関連としてよくとりあげられています。
じつはインバウンド消費による恩恵を受けるのは小売業界だけでなく、旅行・宿泊業、家電などのハイテク消費財メーカー、化粧品メーカー、金融業(人民元などを日本円でスムーズに決済するため)とその裾野は意外と広いのです。
2014年10月から訪日外国人客の消費税免税対象商品が、それまでの家電やブランド品から、食料品、化粧品といった日用品にまで拡大されました。
このこともインバウンド消費の追い風になっています。
【インバウンド消費のこれから】
盛り上がるインバウンド消費ですが、課題もあります。
その恩恵が東京や大阪といった大都市部に集中し、地方にまで至っていないことです。
日本の地方部には、温泉、豪雪、四季の風景、歴史的景観、手厚いサービスなど独特の観光資源を持っているところが多くありますが、海外にアピールしきれていません。
今後は、ツアーで有名観光地や大都市部をまわるだけでなく、いかに個人旅行客が日本の地方を楽しめるようにするかが問われています。
また、日本のインフラが観光客の受け入れに追いついていないため、無線LANが使える場所が限られていたり、住所表示がわかりにくかったり、外国語の案内がなかったりと、訪日外国人観光客が不便と感じることも多いようです。
インバウンド消費の主役は中国人観光客なので、日中関係がこじれれば、大きな影響が出る可能性があります。
観光立国のためには政府と民間が協力して慎重に戦略を練ることが大切です。
どうせ中国人が買ってくれるからと、あぐらをかいているわけにはいきませんね。