急に問題化した「国内の労働者不足」、その原因・対策は?
- 2015/7/14
表面化した人手不足
2014年の失業率は14年ぶりの低水準を記録しています。それと並んで様々な業界、特に飲食や建設、運送業界や中小企業などでは人手不足が問題化しています。こうした業界では、時給を上げても人が集まらず、従業員が集まらないために業務を縮小するところすらあるそうです。なぜ急に人手不足が問題になったのでしょうか?
実は人手不足はこれまでにすでに発生していました。日本の生産年齢人口はすでに減少に転じていて、当然労働市場でも労働供給が減少していました。しかし、リーマンショック、世界金融危機の影響で、日本の経済も打撃を受け、多くの企業は新たに労働者を雇用する力を持っていませんでした。そのため、労働人口が減少していても、それが問題化することはなかったのです。
しかし2014年に入って、アベノミクスの効果や世界の経済がやや上向いてきたことで、徐々に企業の採用活動も回復してきました。こうして企業が新たに採用者を増やそうとした段階で、はじめて人手不足が表面化したのです。
労働者にはいい影響も
2000年代前半の不況のときには、企業によるリストラが社会問題化しました。企業は業績を回復させるために、人員を削減し派遣労働者などの非正規雇用を増やしました。労働者は低賃金で相対的に低い労働環境で働かなければならなくなったり、派遣のため簡単に仕事が変わってスキルが身に付かなかったり、逆に企業に残った正規社員の仕事量が増えて過労死の原因になったり、と様々な問題が発生しました。一言でいうと、労働者の地位が下がったということです。
これは、企業による「雇いたい!」という労働需要よりも労働者の「働きたい!」という労働供給の方が大きいことから発生したものです。企業にとっては買い手市場になるため、より有利な条件で雇うことができるからです。
しかし、それが人手不足に転じたということは、企業の労働需要が労働供給よりも大きくなるということです。つまり、労働者はこれまでよりも有利な条件で雇われる可能性が高くなるということです。これによって低下した労働者の地位は回復するかもしれません。現在は飲食、建設、運送など一部の業界でしか問題になっていませんが、今後人手不足が多くの業界に広がると国内の雇用環境は大きく変化するでしょう。
人手不足による日本経済への負担
一方、人手不足は日本経済全体を見るとマイナス要因にもなります。労働者が不足しているため企業は労働者を集めるために、これまでよりも賃金を上げなければなりません。これまでに他のことに使えていた資金が賃金に回ることで、企業活動が一部制限される可能性があります。また、例え賃金を引き上げても労働者を雇用できないという企業も出てくるでしょう。特に中小企業はすでに新規採用が大変になっているところも多いそうです。こうした企業に対する負担は回り回って日本経済全体を抑圧する要因にもなりかねません。
今後の理想のシナリオとしては、短期的には人手不足によって労働環境が改善されて賃金は上昇し、その後時間をかけて女性や高齢者、外国人労働者を労働市場に参入させることで企業活動に役立てていく、というものではないでしょうか。人手不足は日本の労働者の誰にとっても人ごとも問題ではありません。今後政府や企業がどのような対策をとっていくのか、よく注意しておくといいかもしれませんね。