美術館・博物館に行きましょう
- 2015/9/24
予定のない休日。どこかに遊びに行こう、と思いたつと、どこを選びますか。映画館、緑がゆたかな場所。劇場、ショッピング。さまざまな選択肢があります。
ただ、本心をいえば、できるだけ安くて、手軽なところが良いのが正直な答えでしょうか。それなら、近隣の「美術館」に足を運んでみませんか。
一見、「美術館」や「博物館」は、高尚で敷居が高そうと感じるかもしれません。しかし、チケットも企画展で一〇〇〇円前後、常設展示だけなら四〇〇円ほどで入館できます。映画を観るとなると一八〇〇円。芝居やコンサートなら三〇〇〇円は下らないはず。
なので、ガラス・ケース越しや、パテーションで遮られているとはいえ、本物の作品を間近で拝めるのは、ありがたいこと。
歴史に残る大作や、国宝、また、有名作家の展示が、お目当てならば事前に下調べをしてから行くのが賢明でしょう。
けれども、地元の市立博物館や、県立美術館では、年に数度の大型催事だけではなく、その館が所有している作品を紹介する「常設展」が開かれています。一見、地味におもえますが、知る人ぞ、知る名作を拝見できるチャンスなのです。
最近、美術品コレクターたちの高齢化がすすみ、地元の美術館や博物館が買い取ったり、寄贈されることが増えてきました。
身も蓋もない話ですが、高価なアートを所有していると、相続するときに「税金」がかかるのです。それは、美術品の価値があがれば、あがるほど比例して高くなります。というわけで、仕方なく手放す方も多いのだとか。それに、美術品は、手入れや保管が難しいもの。中でも日本画は、色が抜けやすく、とくに手入れが難しいのは有名な話でしょう。だから、所有主が亡くなると、おのずと近隣のミュージアムが引き受けるのです。だから、わざわざ、遠くまで行かなくても、「これは」と目を見張るような作品を観賞できるかもしれませんよ。
最後に筆者が、地元のミュージアムで、遭遇したエピソードを紹介しましょう。
その日、観賞し終わって展示室を出ようとしたときのことです。新聞社の腕章をつけた記者が、年配の女性にインタビューしていました。銀狐のコートをひるがえしながら彼女は、こう答えていました。
「わたしは、ショウトーに住んでいるから、なかなか、こういう、地方のあまり名が知られていない作品にはお目にかかれなくて。ほら、大物なら、トーハクにも来るけれど、無名の小品を観るためには、色々乗り継いで来なければいけないのよね。面倒だけど」
「ショウトー」が首都の一等地である、「松涛」のことで、「トーハク」は「東京国立近代美術館」をさしていると、気がついたのは、だいぶ後のことです。