料理好きの方にお勧め ドキュメンタリー映画「天のしずく」
- 2017/10/13
最近、辰巳芳子さんという料理研究家のドキュメンタリー映画「天のしずく」を観ました。お料理好きの方にはよく知られた料理家ですよね。今年の12月になんと93歳になられる辰巳さんはただの料理研究家ではありません。生きる事と農、食をつないで考えさせてくれ、日本の食文化のありがたみを改めて感じさせてくれるそんな料理家です。そして、彼女の料理には彼女の愛と思いやりに満ちた生き方が反映されています。
ドキュメンタリー映画「天のしずく」は日本で穫れる季節の野菜から彼女が手間暇をかけてつくる"いのちのスープ"を通して、農の営みから頂く自然の恵み、手間暇かけてつくるという人間愛、それらが人の命をつなぐのだということを伝えるドキュメンタリー映画です。そして、大切な誰かの為に美味しい物を作りたくなるような映画です。
"いのちのスープ"は大切な人の命を支える
"いのちのスープ"とは、辰巳さんのお父様が脳梗塞で倒れ、嚥下障害で苦しむようになってから、辰巳さんの料理の師匠でもある、料理研究家の草分けだったお母様の辰巳浜子さんと食べ物を飲み込むことが困難になったお父様が季節の野菜を楽しむことができるよう、色んな素材を使い、工夫を凝らして作られた様々なスープです。
丁寧に調理した素材を、裏ごししてポタージュ状になったスープなら嚥下障害のお父様にも季節の自然の恵みを味あわせてあげられるだろうというお父様への愛情がつまったスープがお父様の命を支えていたのです。
お父様が亡くなった後、辰巳さんは近くの病院に病気で苦しみ、食事が思うようにとれなくなってしまった患者さんのため"いのちのスープ"を週に数日届けるというボランティアをなさっては沢山の患者さんを"いのちのスープ"で心身ともに元気づけてこられました。
その評判が広がり、終末医療、介護医療従事者、教育者、家族の介護をなさっている方等、様々な状況の中で"いのちのスープ"を必要とする方々のために"いのちのスープ"のお教室を鎌倉のご自宅で開かれるようになりました。今では日本中に"いのちのスープ"のレシピが知れ渡り、病気に苦しむ家族や友人の為に手間をかけ、愛情を込めた"いのちのスープ"があちこちで作られているようです。
料理をどう作るか
この映画は、細かい料理のレシピを紹介するものではありません。辰巳さんが料理をする姿、梅干しを作るなどの丁寧な手仕事をされている姿、お料理教室での様子、"いのちのスープ"を飲んだ後の人々の表情など、料理レシピ以上の事が描かれております。
今の時代、ポタージュを作るとなると、ミキサーを使うのが当たり前のようなレシピが多い中、辰巳さんはゆっくり煮込み柔らかくなったお野菜を丁寧に裏ごしする方が良いのだとおっしゃっています。料理に手間をかけることで特別な味がでるのでしょうね。
話題の玄米スープ
"いのちのスープ"のなかでも代表的な、玄米スープと言うのがありまして、是非作ってみたいスープです。レシピを探してみると、材料はとてもシンプルで、玄米、昆布、梅干しだけです。作り方も簡単そうです。でも、辰巳さんが作っている姿を映像で見ると、「簡単」とは言えませんが、とても楽しそうです。
玄米と対話するように、丁寧に玄米を炒り、色かげんの変化を楽しみながら、様子をみる。丁寧に炒られた玄米は粗熱をとってから、ゆっくり、昆布、梅干しと一緒に炊く。それを味かげんみて、火を止め、こす。
詳しい、レシピは、辰巳さんが長年講師を務められている、「NHK、みんなのきょうの料理」>ウェブサイトでご確認ください。
辰巳さんは93歳になる今年もまだ、スープの会で教えていられるようです。興味のある方は辰巳さんの「辰巳芳子オフィシャルサイト」をご覧ください。
街にでれば、世界中の美味しいものがすぐに食べられる便利な世の中になりました。ちょっと振りかけるだけでプロの味になる魔法のような調味料も沢山開発されていますが、わざわざ、手間をかけて、素材自身の旨みを引き出すという料理の原点をもう一度考え直すいいチャンスになる映画ではないでしょうか?
参照:https://www.kyounoryouri.jp/recipe/19072_%E7%8E%84%E7%B1%B3%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%97.html
http://www.tatsumiyoshiko.com/?p=590